・ISSCG-18では、様々な種類の結晶材料の結晶成長に関する理論的および実験的な講義が行われた。また、パルマ大学内のIMEM-CNRの研究室訪問も含まれていた。参加者は計123人で、世界各国から集まっており、幅広い国籍の学生と交流することができた。講義の休憩時間には、ポスターセッションが行われ、活発な交流が行われていた。
・ICCGE-20は1966年にマサチューセッツ州ボストンで開催されたICCGE-1から始まった結晶成長に関する国際会議である。パラレルセッションでは、7つの会場で同時に口頭発表が行われ、結晶成長の領域を先導する研究者によって活発な議論が行われた。
ICCGE-20では“Stress analysis of multicrystalline Si with artificial grain boundaries to investigate the generation mechanism of dislocation cluster”という題目で口頭発表を行った。
多結晶Siは太陽電池の基板材料として広く用いられている。多結晶Siは製造コストが低いが、結晶中に含まれる結晶欠陥、特に転位クラスターが変換効率低下の要因となっている。しかし、転位クラスターの発生メカニズムは未解明であるため、このメカニズムの解明が多結晶Siの高品質化・太陽電池の変換効率向上につながる。そこで我々は、実際に作製した多結晶Siに含まれる欠陥分布と、応力解析によって欠陥が発生した粒界における応力分布の比較から、応力が転位クラスターの発生に与える影響について調査した。
結果として、成長方向の結晶方位を変えることで、結晶成長中に発生する応力が変わり、転位クラスターの発生を抑制できることを示すことができた。さらに、粒界に加わる応力の大きさだけではなく、応力のかかる向きも転位クラスター発生に大きく影響することを、実験とシミュレーションから示すことができた。
質疑応答では、応力解析シミュレーションで得られた応力の値が、欠陥発生に必要とされる大きさよりも小さいという意見をいただいた。この理由として、今回のモデルでは再現できていないよりミクロな結晶構造が影響していると考えられ、その再現は今後の課題である。
ISSCG-18では、英語での結晶成長の講義だけでなく、パルマ大学の研究室訪問、世界各国の学生との交流ができ、とても貴重な経験となった。また、講義だけでなく、サマースクール中のディナーにも参加した。海外の学生と現地で食事を共にし、研究や文化の違いについて話すことができ、広い視野を持つことができる良い機会となった。
ICCGE-20では、英語での口頭発表は初めてだったが、無事遂行することができた。質疑応答では、質問の意図をうまく汲み取ることができず不十分な説明となってしまったため、今後同じような機会があれば答えることができるように、英語の勉強も行っていきたい。また、他の研究者の発表を通して、自身の研究の理解を深めるだけでなく、今後の研究方針を考える貴重な機会となった。
最後に、本サマースクールならびに本会議への参加にあたり、貴財団から多大なるご支援を受け賜りましたことを心より感謝申し上げます。