International Conference on Luminescence (ICL)は、3年ごとに開催されている国際学会であり、発光材料や発光メカニズムなど発光に関するトピックをカバーしている。今回、20回目となるICL 2023は、パリのChimie ParisTechで8月27日から9月1日まで開催された。私は2014年にポーランドで開催された第17回大会以来の参加である。2026年に開催される21回大会(ICL 2026)は、京都で開催されることが正式に発表された。
本会議では、「Observation of multiple-quantum-well polaritons in organic-inorganic 2D perovskite films prepared by Langmuir−Blodgett method」という題目で口頭発表を行った。
2次元構造で多重量子井戸構造を有する有機無機ハイブリット型のペロブスカイト薄膜試料は量子井戸層数をコントロールするために、Langmuir−Blodgett法によって作製した。極低温と室温において、試料の反射スペクトルを測定した。また、異なる量子井戸に存在する励起子が光を介して結合する多重量子井戸ポラリトンによって形成される反射スペクトル構造の理論計算を行った。この理論計算と実験結果を比較し、理論計算で予測された量子井戸数による反射スペクトルの構造変化が実験結果と一致したため、ペロブスカイト薄膜試料に多重量子井戸ポラリトンが形成されていることを明らかにした。反射スペクトルの構造変化の由来や理論計算に用いた非輻射再結合係数に関して討論した。
光について幅広い分野をカバーしている本国際会議に参加することで、光物性について様々な知見を得ることができた。自分自身の発表だけでなく、他の参加者同士の議論からも学ぶべき点が多く、参加期間中はこれからの研究活動の糧となる刺激を得た。
また、国内学会の発表とは異なり、国際的な学術の最前線において、自分自身の研究がどのような評価をもって受け止められるものであるかが、質疑応答のみならず参加者たち反応から伺い知ることができたことも非常に有意義であった。
さらに、多様なバックグラウンドを持つ海外研究者との交流する機会にも恵まれた。交流の一機会であった、発表に関する質疑応答に関しては、その着眼点に刺激を受けたことは勿論だが、英語という共通言語を用いながらもコミュニケーションの難しさを改めて体感する契機でもあった。この体験を通じて自身の言語能力についての課題を認識するとともに、他国の英語母語話者ではない研究者たちが自然と行っていた言語の壁を意識させない堂々とした議論に対する姿勢は、国際学会に参加したからこそ得られた学びであった。
最後に、本国際会議への参加にあたってご支援いただいた貴財団に心より感謝申し上げます。