令和5年度丸文財団国際交流助成による支援を受け、タイで開催された16th Eurasia Conference on Chemical Sciences 2023に参加し、自身の研究に関する口頭発表を行った。本国際会議は1988年にタイで始まり、ヨーロッパ・アジアを含めた世界中の科学者が一堂に会し、研究・教育分野における協力を強化することを目的としている。16回目の開催となる本会議は、“Frontiers in Chemical Sciences for Sustainability”をテーマに、現在、世界的な目標の一つとしても掲げられている持続可能な開発に関し、各研究者が自身の知見や意見の交換が行われた会議となった。多様な分野の科学者が世界中から集まり、4つの会場で口頭発表・ポスター発表が行われ、参加者同士での活発な議論が繰り広げられた。
私は本学会において“Paper-Based Analytical Devices for Semi-Quantitative Urine Protein Analysis Using QR Code”という題目で口頭発表を行った。
QRコードを用いた尿中タンパク質検出デバイスの開発を行っている。尿中のタンパク質は腎臓病を診断する上で用いられる重要な指標の一つである。現在は尿試験紙を用いた検出法が一般的となっているが、試験紙上の色を目視によって判断するため、得られる結果に個人差が生じるという課題がある。これに対して、本研究ではQRコードを導入することによる個人に依存しない検出の実現を目指している。スマートフォンによるQRコードの読み取りを通して、一般の患者が自宅等で簡易的に正確な検査を行うことができるため、腎臓病の早期発見への貢献が期待できる。また、分析対象を変えることで様々な疾患への応用も期待できる。本発表では、タンパク質の標準サンプルおよび人工尿を用いたデバイスの評価や実際の尿サンプルを用いた検討について報告した。
本学会では、12分間の発表および3分間の質疑応答が設けられた。聴講者からは実際の尿サンプルを用いた場合において、尿の色がQRコードの読み取り結果に与える影響に関する質問を受けた。
学会での口頭発表は本学会が初めてであったが、入念に発表練習および質疑対策を行ったため緊張することなく終えることができた。また、発表時間以外でも聴講者から質問を受けるなど、異なる視点からの意見を聞く貴重な機会となった。さらに学会全体において、参加していた学生が積極的に会議に参加する姿勢を受け自身の研究生活を見直す良い刺激となったため、残りの研究活動の糧にしていきたいと感じた。
初日のレセプションでは様々な国の学生と交流することができ、研究だけでなく互いの文化などに関して英語を用いて積極的にコミュニケーションを取ることができた。
最後に、本国際会議への出席にあたり、貴財団より多大なご支援をいただきましたことに関して、心より感謝申し上げます。