SPIE Photonics Westは国際光工学会(SPIE)が毎年開催する光学分野最大規模の国際会議である。今年度は、サンフランシスコのMoscone Centerにて、2024年1月27日から2月1日の期間に実施された。本学会ではレーザ、生物医学光学、バイオフォトニクス、量子、光エレクトロニクスを含む光工学に関する幅広い討議内容について最新の研究成果が公表された。今年は97のセッションで約5,000件の発表が行われ、研究者同士の活発な議論が行われた。また、併催されるSPIE Photonics West Exhibitionsは1,500以上の企業が参加する世界最大級のものであった。
次回はサンフランシスコにて2025年1月25日から1月30日まで行われる。
本会議では、“Robustness of Digital Subcarrier Multiplexing Systems to Laser Phase Noise and Chromatic Dispersion”と題して口頭発表を行った。
通信需要の増加に対応した光ネットワークの大容量化を達成するために、光パスごとに伝送可能な最大の変調次数を選択する距離適応変調が有効である。しかし、従来のシングルキャリアシステムでは、光パスごとに1つの変調次数しか選択できず、伝送特性への適応性が制限される。一方で、ディジタルサブキャリア多重システムでは、光パスごとに複数のサブキャリアの変調次数を組み合わせて選択できるため、伝送特性への柔軟な適応が可能となる。そこで、本論文ではディジタルサブキャリア多重システムの伝送特性を数値的に評価した。レーザ位相雑音と波長分散の相互作用を大規模シミュレーションにより検討し、2つの位相推定手法を比較した。その結果適切な位相推定手法を用いることで、ディジタルサブキャリア多重システムは従来システムより長距離の伝送を可能にすることが示された。
本学会が自身にとって初めての国際学会での発表であったが、事前練習の成果もあり、無事に発表を終えることができた。また、投稿した論文が高く評価され、Optical Communications Best Student Paper Awardを受賞した。この受賞により、研究に対して自信を持つことができた。一方で、大学や企業の研究者に混ざり発表を行ったことで自身の未熟さを自覚したため、今後はさらに成長できるように努めたい。また、他の研究者の発表を聴講したことでデバイス開発における課題や目標を知り、シミュレーションを主体として研究を行っている自身にはない視点を得た。さらに、併催されたSPIE Photonics West Exhibitionsにて最新の技術に触れたことで研究への意欲が高まった。
これらの経験が今後の研究生活の糧となると確信している。
最後に、本国際会議への参加にあたり、貴財団より多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。