EUCASはヨーロッパで2年に1度開催される超伝導分野における世界最大規模の国際会議であり、発表件数は約1,000件に及ぶ。エレクトロニクス応用分野、材料分野など超伝導に関する様々な研究について、大学、研究機関、企業などの世界各国の研究者が発表し議論を交わした。イタリアのボローニャにあるBologna Congressiにて9月3日から9月7日の5日間開催された。ボローニャはボロネーゼや世界最古の大学であるボローニャ大学が有名であり、美食と学問の都である。また、ボローニャ中央駅はイタリア有数のハブ駅であり、交通の便に優れた都市である。
次回のEUCASはポルトガルのポルトで開催される。
「Development of cryocooler system for HTS wireless power transfer system」というテーマで発表をした。
ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer: WPT)は近年、伝送効率向上のために超伝導線材コイルを液体窒素で冷却してWPTに用いる研究がされている。しかし、液体窒素冷却では測定が煩雑であり、また液体窒素温度(77 K)のみの性能しか明らかにできない。そこで、冷凍機を用いることで測定が簡易的になり、また温度制御して77 K以下に冷却できるため、液体窒素冷却の問題を解決することが期待できる。超伝導線材コイルは冷凍機冷却に適していないため、今回は冷凍機冷却に適した超伝導バルクコイルを用いることを提案した。本発表では超伝導バルクコイルを用いたWPT用冷却システムを開発し、それによる超伝導バルクコイルを用いたWPTの性能(Q値、伝送効率、耐電力特性)の温度依存性について報告した。冷却システムのコイル支持材やチャンバーについては、コイルやWPTへの影響を抑制するようにサイズ、構造、材質を検討した。温度依存性の測定から、より低温に冷却するほど性能(Q値、伝送効率、耐電力特性)が向上することを明らかにした。
質疑応答では開発したシステムの応用先や使用した冷凍機の種類について討論した。
英語でのコミュニケーションについては質問に対して端的に回答できたが、詳細な説明には苦手意識を感じたので会話がスムーズにできるよう英語でのコミュニケーション力をさらに高める必要があると感じた。国際交流としては約20名の様々な国の参加者に聴講していただくことで達成できた。学会全体を通じて、自身の研究の優位性を世界各国の研究者に広めることができ、非常に貴重な経験をすることができた。また、発表を聴講する中で自身の知識を深めたり、自身の研究の参考になる情報を収集したりすることができた。
最後に、本会議の参加にあたり多大なるご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。