本国際会議 The 10th International Conference of Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology (ASPEN) 2023 は、アジア精密工学会(ASPEN)の開催する国際会議であり、精密工学・ナノテクノロジーを幅広く扱う会議であった。9ヶ国・地域から280人以上が参加し、口頭発表・ポスター発表・招待講演等を合わせて212件の発表が行われた。学会期間中は3つのセッションが同時に行われ、計測・加工の技術を中心に様々な最先端のトピックが盛んに議論された。会議は香港理工大学のホテル観光管理学部に併設されるHotel ICONにて行われ、発表の合間には飲み物・軽食等がふるまわれる等、おもてなしの工夫が感じられた。次回の会議であるASPEN2025は、台湾・台北にて開催される予定である。
本学会では、"A novel single-microparticle total analysis system driven by optical tweezers" という題目で口頭発表を行った。
マイクロプラスチックや砂などの環境中マイクロ粒子は、表面に有機化学物質や重金属等の汚染物質を吸着し、なおかつ自身が軽く環境中で広がりやすいために、環境中に汚染物質を広げる媒体となることが懸念されている。そのため環境中マイクロ粒子に関する詳細な分析が求められているが、既存の分析手段は個々の小径粒子を詳細に分析できないという点で不十分である。そこで本研究では、光ピンセットと呼ばれる技術を利用した、個別のマイクロ粒子を詳細に分析できる新しいシステムの概念を提案している。光ピンセットとは、光の持つ運動量を利用して、強く集束させたレーザー光の焦点付近に微粒子を保持する技術である。提案システムでは、光ピンセットによって個々の粒子の位置・姿勢を制御し、接触と同時に接触部近傍を分析する機能を持つ種々の分析ポートに分析したい面を順々に当てていくことで、個別の粒子の全周の材質・付着物質等の分析結果を詳細に取得する。発表では、提案システムの概念実証として、不規則形状ポリスチレン粒子(直径50µm程度)を光ピンセットで搬送し、その表面に付着した蛍光塗料を微細円筒状光ファイバ(分析ポートの実現例)によって局所的に検出した実験について報告した。
自身にとって初の国際会議であり、英語での口頭発表には緊張したが、事前の練習の甲斐もあり無事に発表を終えることができた。また、自身の発表予稿についてご評価をいただき、Best Paper Awardという賞を受賞することができた。
会議では、ユニークなテーマの発表を数多く聴講することができ、質問を通じて英語でのディスカッションを行うことができた。これは、自身の今後の研究テーマを考える上で大変有意義であった。また、会議全体を通じて、海外の学生の積極的に質問する姿勢が印象に残り、自身の研究姿勢への刺激となった。
全体として、自身にとって新鮮な経験が多く、非常に有意義な学会参加になったと考えている。
最後に、本国際会議に参加するに当たり、丸文財団から多大なるご支援を賜りましたことを心より感謝申し上げます。