国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
岡﨑 大樹
(京都大学 化学研究所)
会議名
Conference on Lasers and Electro-Optics/Europe - European Quantum Electronics Conferences
(CLEO®/Europe EQEC 2023)
期日
2023年6月26日~30日
開催地
International Congress Center Messe München, München, Germany

1. 国際会議の概要

2023年6月26日から2023年6月30日まで、ドイツ(ミュンヘン)で開催されたConference on Lasers and Electro-Optics/Europe - European Quantum Electronics Conferences (CLEO®/Europe EQEC 2023) へ参加し、研究発表を行った。

本会議は、2年に1度ミュンヘンで開催される欧州最大の光学に関する国際会議である。CLEO®/Europeでは、レーザー光源開発、材料、超高速科学、ファイバーオプティクス、非線形光学、テラヘルツ光源、高磁場物理、光通信、ナノフォトニクス、バイオフォトニクスなど、レーザーとフォトニクスの幅広い分野における最新の話題に関して研究発表がなされる一方で、EQECは、量子光学、量子情報、原子光学、超高速光学、非線形現象と自己組織化、プラズモニクスとメタマテリアル、基礎ナノ光学、理論的および計算的フォトニクスを取り扱っており、参加登録者は双方の会議に出席することができる。

前回はコロナ禍の都合上、オンライン開催であったが、本年は4年ぶりに完全な現地開催が決定し、光技術に関連した世界中の研究者・技術者が新ミュンヘン国際見本市会場に集い、対面での議論を交わした。


会議場入口の写真

会議場エントランスの様子
会議場と併せて大規模な展示会も開設されている

2. 研究テーマと討論内容

本研究では、Cr2+イオンを硫化亜鉛にドープしたCr:ZnSという結晶材料を用いて、波長2.3ミクロンにおけるフェムト秒レーザーの開発を行っている。当該レーザー結晶は2015年ごろから急速な開発が世界的に進められ、近年では赤外振動分光や金属・半導体材料中の電子操作をはじめとした様々な分野で、光源応用技術が報告され始めた重要な次世代レーザー材料である。

本研究では、Cr:ZnSレーザーの光共振器内に一酸化炭素分子のガスセルを挿入することで、一酸化炭素分子が示す振動回転遷移の共鳴周波数において狭線幅のスペクトルピーク構造を重畳した新奇な超短パルス発振が可能になることを初めて実験的に実証し、その原理解明に成功した。特に、今回の発表では、形成されるスペクトルピークは気相分子の光学定数の虚部による共振器内振幅変調に起因した現象であり、レーザー結晶において生じる強い非線形光学効果によって誘起されるという物理機構を数値計算によって明らかにしたことを報告した。

本研究で得られた新規なレーザー発振は、超短パルスレーザーが示す広帯域性と単色レーザーが示す高スペクトル輝度とを両立する革新的なレーザー発振である。見出された物理的な起源は、今後、その特性を活かした新規な振動分光手法の創出へ向けて、当光源を制御し、実用化する際の重要な指針を与えることが期待される。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

光技術に関する幅広い題材を取扱うCLEO®/Europe EQEC 2023に出席することで、中赤外レーザーの光源技術開発・光源応用をはじめとしたレーザー応用技術の世界動向を把握することができた。

また、今回の会議では、4年ぶりの対面の現地開催ということもあり、関連研究分野の海外研究者とランチを取りながらの議論や情報共有をする機会に多く恵まれた。また、異国の地ということもあり、普段は交流の少ない国内の分野外の研究者とも親交が深まった.光源開発を行う私のような研究者にとっては,レーザー装置のユーザー側の研究者との交流は極めて貴重である.また,ミュンヘンにあるマックスプランク量子光学研究所の研究室を見学する機会に恵まれるなど、会議外においても国内では経験できない有意義な時間を過ごすことができた。

最後に、本会議への参加にあたって多大なご支援を受け賜りました丸文財団に心より感謝申し上げます。

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