EUCAS (European Conference on Applied Superconductivity) は、今年で30周年を迎える国際会議である。EUCASは、材料、導体、医療などの大規模アプリケーションや新規デバイス、量子コンピューティングなどのエレクトロニクスに関する応用超伝導の全分野の知識や最新の進捗を共有するワールドクラスの国際会議となっている。
16回目の開催となる今回のEUCASは、イタリアのボローニャ(会場名:Palazzo della Cultura e dei Congressi)で9月3日(日)~ 9月7日(木)に行われた。
本学会では、化学プラントなどに配備された磁性配管を対象とした非接触の非破壊検査技術についてポスター発表を行った。保温材で覆われた配管表面に発生する腐食を検査するため、保温材を取り外してから検査する手法が主流であるが、時間とコストが大幅にかかる。そのため、保温材上からの検査が唯一可能と考えられる磁歪を用いた超音波ガイド波送受信技術と超高感度磁気センサである高温超伝導SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)を組み合わせた計測システムの開発を行っている。
本研究では、検査対象をSTPG370管として、円筒形のパーマロイ電磁石を用いて管全周を軸方向に磁化した状態で、これと並行方向に励振磁場を与えて縦波ガイド波を送信し、HTS-SQUIDと磁気結合した誘導コイルでガイド波由来の磁気信号を検出する新しい計測システムを提案した。ここでは、電磁界解析ソフトを用いて電磁石が管に与える磁化の最適な条件について調査した。その結果、STPG370の飽和磁束密度まで管を磁化することが可能だと判明した。この解析結果を基に実際に欠陥検出を行った結果、欠陥で反射したガイド波由来の磁気信号の検出に成功した。具体的な計測手法や使用した装置について説明する機会を多くいただき大変充実した発表であった。
初めての国際学会に参加し、数多くの研究者と交流させていただいたことで大変貴重な経験ができた。自身の研究内容について説明、議論する際、周りの方々に助けてもらいながらもコミュニケーション取れたことに大きな達成感を得ることができた。しかし、英語での質問を聞き取れなかったり、説明が上手く伝わらなかったりすることがあったので、今後も引き続き英語力の向上に努めていきたいと感じた。また、他者の発表を聴講したり、見学したりすることで研究面やコミュニケーション面で大変良い刺激を得られた。
今回の国際会議に参加するにあたり、ご支援していただいた一般財団法人丸文財団に心より御礼申し上げます。