The 37th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 2024) は1987年に始まり今年で37回目を迎えるMEMS分野最大の国際会議です。
Micro Electro Mechanical Systems (=MEMS) は直訳すると微細な機械と電子要素を持つシステムとなりますが、広義にはマイクロシステムに関連する技術全般の内容を含む非常にバラエティ豊かな分野です。本会議では今年もマイクロ・ナノデバイスの加工技術やパッケージング技術、光学デバイス、流体システム、バイオ・医療デバイス、物理・化学センサ、RFデバイス、電磁デバイス、アクチュエータなど300件以上(応募659件中、口頭72件、ポスター209件)の発表がありました。例年世界各地の研究者や学生、企業などが600~800人ほど参加します。
第35回が東京(オンライン併用)、第36回がミュンヘン(ドイツ)、本年度第37回目はオースティン(アメリカ)での開催となりました。開催場所はテキサス大学オースティン校にあるAT&T Hotel and Conference Centerでの開催となり、来年度は1月19~23日に台湾、高雄での開催が予定されています。
本会議では“No-distortion method of kirigami structures using active gripping”という題目で発表を行いました。
本研究は伸縮電子デバイスに使用される切り紙構造の均一的な変形手法に関する研究です。ご存知のように、七夕の紙飾りは紙に切れ込みを与え、伸ばして変形することで作ります。この原理は伸縮性を有さない材料に対して構造による伸縮性を与えていると解釈でき、切り紙構造は銅などの、伸びない一方で電気的に優秀な薄膜・フィルム材料から、伸縮電子デバイスを制作する手法として近年注目されています。例として切り紙構造を用いた伸縮ディスプレイやセンサ等の応用デバイスが報告されています。一方で、切り紙構造には構造全体の形状や引っ張り度合いなどにより形状がゆがんでしまう性質があり、デバイスの多ユニット・大面積化を実現する上で深刻な問題がありました。そこで私は切り紙構造を固定する把持条件に着目し、引っ張りに伴い把持幅を調節することでゆがみを生じさせずに均一な変形を実現する手法を提案し、本手法により切り紙構造の全体形状や引っ張り度合い、ポアソン比などのゆがみに影響を与えていた条件に関係なく、ゆがみない均一な変形を実現可能であることを検証しました。
本会議で私はポスター発表を行い、2時間のセッション期間において様々な国の研究者の方と議論する機会をいただきました。MEMS分野の中でも切り紙構造に馴染みのない研究者の方とは、研究背景などを含む一般的な観点での議論として、本研究の波及効果や展望についての議論を行うことができました。また、切り紙・折り紙デバイスを研究しているグループの方々と議論する機会に巡りあうことができ、デバイスの構成やファブリケーション、形状保持手法に関する議論を行いました。
前年度に続き2回目の参加となった本会議では、ある種のリベンジとしての気概がありました。MEMS分野は裾野が広いため、自分の専門から離れている研究について理解の不足や尻込みがあった点が前年度の反省点でしたが、本年度は一通りポスター見たのち、説明を聞きに行くところを決めて事前に少し調べてから行ったのでディスカッションが進んだと思います。バンケット等を通して他大学・他国の人々と話すきっかけが得られ、世界中の人が同じ分野で競合しながら研究が進められていることを実感できました。修了後は企業の研究職に就く予定ですが、大学で培った研究スキルや学会参加などを通して得られた経験を活かして今後も頑張っていきたいと思います。
最後に、本学会の参加にあたり、一般財団法人丸文財団に多大なるご支援をいただきましたこと厚く御礼申し上げます。