Material Research Society (MRS) は材料料学の分野において世界最大規模の学会であり、世界90か国以上の産官学の研究者14,000人以上が所属しています。エネルギー材料やナノ材料から、データサイエンスを活用した材料開発まで“材料”に関する様々な研究者が集まっています。今回私が参加したMRS2023 Spring Meetingでは6日間で合計59のシンポジウムで口頭発表が行われました。それぞれのシンポジウムにおいて各分野をリードする研究者が集い、最新の研究動向について活発な議論がなされました。また夜にはポスターセッションが行われ、飲み物や軽食を楽しみながら研究者同士の活発な交流が行われました。
次回のMRS Fall Meeting (2023/11/26-12/1) はアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンで開催が予定されています。
本発表では “Toroidal Dipole-Induced Photocurrent Enhancement in Silicon Nanodisk Hexagonal Array beyond 1400 nm in Wavelength” という題目で口頭発表を行いました。
自動運転システムや3D地形マッピングなどに応用されるLiDAR技術の進展により近赤外(波長1550nm)領域で動作する安価で高感度な光検出素子の需要が高まっています。一般的に安価でCMOSコンパチブルなシリコン材料はこの波長域で感度を持たないが、本研究では多結晶シリコンのナノ構造(メタサーフェス)を提案し、本構造が有するMie共鳴現象を利用することで波長1550nm受光感度向上を実現します。
我々は直径数百nmのシリコンのディスクを六方格子上に配列させたメタサーフェスを提案しています。本構造はトロイダル双極子共鳴と呼ばれる特異な共鳴を有し、光をナノ構造内部に強く閉じ込めることができます。そのため光が長く物質中にとどまるので光吸収率を大幅に増強することができます。その中で我々はナノ構造の構造パラメータを制御することによりトロイダル双極子共鳴波長を近赤外光の広範囲(1100-1550nm)にわたって制御し、光吸収増強とそれに伴う光電流増強を実験的に示しました。
さらに本研究ではメタサーフェス下部に金属ミラーを配置した構造を提案し、入射光を100%吸収する完全吸収が達成されることを電磁場シミュレーションにより明らかにしました。
今回、本会議でも注目度の高い Plasmonics, Metasurfaces and Metamaterials-Design, Materials and Applications のシンポジウムでの発表であったため、200人程度収容可能な大ホールでの発表を行うことができました。会議最終日の午後からのセッションであったため聴衆の数は少なかったものの、発表終了後、海外の研究者の方から質問をいただき、研究内容について議論することができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
また自身の研究成果をアピールするのみならず、世界をリードする研究者の方々の招待講演を聴講し、最先端の研究動向を知ることができました。
一方で、自身の発表やほかの講演の聴講、議論を通じて、自身の英語コミュニケーション能力不足を実感しました。研究を遂行する上では英語でのコミュニケーションは必須なため、今後も継続して英語コミュニケーション能力向上に努めたいと思います。私にとって初めての国際学会参加によって国内学会とは異なった刺激を得ることができ、今後の研究活動へのモチベーションが高まりました。
最後になりますが、本会議への参加に際しまして、多大なるご支援を受け賜りました貴財団に心から感謝申し上げます。