国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
美和 あす華
(千葉大学 大学院融合理工学府 基幹工学専攻)
会議名
45th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC 2023)
期日
2023年7月24日~27日
開催地
International Convention Centre Sydney, Sydney, Australia

1. 国際会議の概要

IEEE EMBCは米国最大の電気・電子工学技術の学会であるIEEE(米国電気電子学会: Institute of Electrical and Electronics Engineers)の傘下にある生体医工学専門部会の国際学会であり、当該分野では最大かつ最も権威がある。

EMBC2023は、2023年7月24日から27日まで、オーストラリア・シドニーで開催され、500件以上の口頭発表、1,200件以上のポスター発表が行われた。

2. 研究テーマと討論内容

骨や皮膚、筋肉等の生体組織を介して呈示される骨伝導音はその一部が外耳・中耳を介さずに内耳に到達するため、外耳や中耳の障害に起因する伝音性難聴の補聴に利用されてきた。また、外耳孔を塞がない、耳栓装用時にも聴取可能等の利点から種々のコミュニケーション・デバイスに応用されている。一般に骨伝導振動子は側頭骨の乳様突起(耳の裏側にある頭骨部)や下顎骨の顆状突起(耳の前方の頭骨部)に呈示されるが、これらの呈示部位は比較的硬く曲面を呈しているために、振動子が最適位置からずれやすい、長時間の使用により痛みが生じる等の問題が存在する。そのため、近年のスマートグラスへの応用を図った例等では、鼻根部等の顔面への呈示が試みられている。

一方、骨伝導知覚の特長の一つに、外耳道を閉塞した際に低周波音のラウドネスが増大する現象、すなわち「耳栓効果」が挙げられる。耳栓効果を効果的に利用することで低域の聞こえを増強できるため、概して低周波出力が不足する小型オーディオ・デバイスの音質改善への応用が期待されている。


発表の様子

本研究では、耳栓効果の音声コミュニケーション・デバイスへの実用性を示すために、耳栓効果が音声知覚特性へ与える影響を評価した。特に大きな耳栓効果が得られる顔面部位(鼻骨および眼窩下部)と従来部位(乳様突起および顆状突起)に骨伝導音を呈示し単音節明瞭度試験を行った。その結果、どの部位においても耳栓効果によって単音節明瞭度が上昇し、耳栓効果の音声コミュニケーション促進への有効性が示された。また、その効果は音素の音響的特徴に影響を受けること(周波数の低い有声子音は明瞭度が上昇しやすい傾向、周波数の高い無声子音は耳栓により異聴が増加する傾向)が明らかになった。これらの結果は、新型骨伝導デバイスの設計に有用な情報を与えるものである。

質疑応答では、「市販されている骨伝導デバイスは、耳を塞がないものである。それなのになぜ耳栓効果を調べているのか。」という質問をいただいた。「骨伝導は、騒音下で耳を保護するために聴覚保護具を装用している建設現場や船の機関室等で働く人たちのデバイスや外耳道閉鎖症患者のためのデバイスに応用できる。これらのように、意図せずとも耳栓効果が生じる場合があるため、耳栓効果についての研究は重要である。」と回答したかったが、英語で伝えきることができなかった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

上記の内容をオーラルにて発表を行った。

本発表は初めての国際学会でのオーラル発表の機会であった。英語での発表はとても緊張したが、たくさんした練習の成果を出せたと思う。しかしながら、質疑応答では、質問は聞き取れたものの、それに対する回答を伝えきることができず、英語能力の低さを痛感した。これからも国際学会や英語論文の執筆が控えているため、英語力向上に努めていきたい。

また、本渡航は2回目の海外発表であったが、多くの海外の研究者の発表を拝見し、海外では多くの分野にわたって、最新技術を利用したり、興味を引くような面白い研究が多くされていたりすることを改めて実感し、研究へのモチベーションがさらに向上した。

最後に、本会議への参加にあたってご支援いただいた貴財団に心より感謝申し上げます。

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