丸文財団国際交流助成に選出いただき、IEEE IUS 2023に参加し、研究発表を行いました。会場はPalais des congrès de Montréalです。
本会議は超音波に関する国際会議です。学会には世界各国の研究者が一堂に会し、医療用超音波、工業用超音波、物理音響、微小音響、トランスデューサ設計など、様々な分野で1,203件のプレゼンテーションが行われ、活発な議論が交わされました。29つの招待講演があり、現在のトレンドは医療用超音波やイメージングに関する研究であると感じました。また、学生同士の交流を深めるためのイベントも開催されました。
本会議にてC2P-28の超音波モーターとアクチュエーターのセッションに「Ultrasound Liquid Lens Using a Viscoelastic Gel Film and Acoustic Radiation Force」というタイトルでポスター発表を行いました。内容は粘弾性ゲル膜と音響放射力を用いた超音波液体レンズです。
従来のカメラモジュールは機械的可動部を有し、光軸方向にレンズを移動させることで焦点距離を制御しています。しかし、この移動機構がカメラデバイスの体積増加の一因となっています。
本報告では、粘弾性ゲル膜と音響放射力を用いた小型の可変焦点液体レンズを提案し、その応答速度の向上とロバスト性の向上を図りました。液体レンズに連続正弦波信号を入力すると、レンズ内に音響定在波が発生し、レンズ表面に作用する音響放射力によりレンズ表面(ゲル膜表面)は周囲媒質(空気)方向に凸状に変形しました。超音波駆動下のレンズの振動分布をレーザドップラ振動計で、レンズ表面の変形形状をレーザ変位計で測定した結果、入力電圧振幅値が大きいほどレンズの変位は大きくなりました。入力電圧によってレンズの曲率が変化するため、入力電圧によって焦点距離が制御できることがわかりました。入力電圧変化時のレンズの応答時間はゲル膜厚に依存するため、膜厚が薄くなるに従って応答時間は短くなるという結果が得られました。
研究内容は新たなレンズ構造の液体レンズであるため、液体レンズの可変焦点原理や構造について多くの質問をいただきました。質問に限らず、今後測定予定である焦点距離や収差の測定に関するアドバイスをいただけるなど、とても温かい雰囲気で発表や質疑を行うことができました。
6日間にわたる会議のうち、4日目の午前と午後の2回、ポスター発表を行いました。あらゆる分野を専攻している方々の様々な角度からの意見に刺激を得ることができました。
研究発表以外においても、学会が主催するイベントに積極的に参加しました。学生の交流会やディナーの会食などはいろいろな国の参加者と関わることができるイベントでした。特にその中でも、ディナーとアカペラグループによるショーが印象に残っています。ホールに学会関係者が集められ、ディナーとアカペラグループのショーを楽しみました。ディナーは大変美味しく、ショーにおいてはアカペラと感じられないほど迫力がありました。また、参加者はダンスしながら楽しそうに体で表現しながら聞いており、盛り上がり方も日本とは違った面を見ることができました。いろいろな国の参加者が集まるパーティーだからこそ経験できたと感じています。
最後に、ご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団の皆様に心より感謝いたします。