Photonics West 2024はSPIE (The International Society for Optical Engineering) が主催する光学・フォトニクスに関連する世界最大規模の国際会議である。本会議では主にBiOS、LASE、OPTO、Quantum West(バイオフォトニクス、レーザー技術、光エレクトロニクス、量子光学)の分野に分かれ、4,500以上のプレゼンテーションがあり、最新の研究報告と関連した議論が行われた。また、展示会では1,200以上の企業が出展し、大変盛況であった。
私は、国際会議参加、英語の講演、海外出張は初めての経験であったが、自身の成長と学びに繋がる貴重な経験であった。LASE内の“Frontiers in Ultrafast Optics: Biomedical, Scientific, and Industrial Applications XXIV”という会議の“Shaping and Characterization of Ultrashort Pulses”というカテゴリでオーラルセッションにて発表を行った。
次回の本会議Photonics West 2025は2025年1月25日~1月30日に開催予定です。
“Single-photon-level femtosecond time-resolved measurement by asynchronous optical sampling with dual-wavelength comb”というタイトルで口頭発表を行った。
単一光子レベルの時間分解計測技術は、極微弱光検出を必要とする超高速光エレクトロニクス現象や、バイオセンシングや環境計測、量子情報科学などの広範な分野で有用である。一方で、単一光子検出器はナノ秒の時間分解能に制限されるため、我々は二波長同期光コムと非同期光サンプリング法を用いて光トリガを元に単一光子を積算する時間分解計測手法を開発することで、単一光子レベルのサンプルパルスの時間特性をフェムト秒の時間分解能で相互相関波形として取得することに成功した。本講演では、これらの従来FROG検出等によってmWレベルの光パワーが用いられてきた超高速計測技術を、pWレベルにおいても実証したことを報告した。質疑応答では、単一光子検出における効率や、本手法の応用可能性について議論を行った。また、講演後にも、個別に複数の参加者から質問を受け、有意義な議論ができた。
初めての国際学会かつ海外開催ということもあり、緊張は相当なものであったが、準備をしっかりと行い、自身の研究成果を伝えることができた。その過程で、英語での口頭発表の技術やプレゼンテーションのスキルを向上させる良い機会となった。
また、学会では自身と関連するセッションにも積極的に参加した。他の研究者の発表を聞くことで、新しい視点やアプローチを学ぶことができた。さらに、関連する研究領域の最新動向についても理解を深めることができた。
展示会では、最新の製品情報を知ることができた。これらの製品は、私の研究に直接関連するものであり、将来的に実験や解析に役立てることができると考えている。
この学会参加は、私にとって大変貴重な機会であり、個人としても研究者としても成長する機会となった。ただ、一つの課題として英語でのディスカッションに難があった。言語の壁があることで、有益な議論や意見交換が制限されることがあり、それが非常に残念であった。そのため、今後は英語力の向上を積極的に取り組み、次回の国際学会等ではより有意義な議論に参加できるように努力したいと考えている。
Photonics West 2024の参加後、国際共同研究としてコロラド大学Thomas R. Schibli教授のもとに、約1週間滞在した。
訪問したコロラド大学ボルダー校はアメリカ合衆国コロラド州の公立大学である。同大学は数々のノーベル賞受賞者を輩出しており、その中でも私の研究テーマである光周波数コムの開発に貢献し、2005年にノーベル物理学賞を受賞したJohn L. Hall博士はその1人である。今回の共同研究は、初めて経験する実験や様々な研究室の訪問を通じて、新たな知識と経験を積む素晴らしい機会となった。
私はSchibli教授および同研究室メンバーと、“量子光学研究のための光周波数コムのタイミング同期に関する研究”を行った。
同研究室が開発したRb原子時計に同期した1,550nmレーザーと、空間系のErコムのビート信号の安定性を測定し、Erコムのロックに使用している市販のRb標準でリミットされることの確認およびGPS信号の安定性との比較を行った。
また、開発途中の新方式のRb原子時計において、Erコムの周波数を掃引してRb原子の2光子吸収の強度を測定する手法を学び、実際に波形を測定した。これにより、周波数基準による同期性能向上に関する示唆を得ることができた。
また、我々の研究であるASOPSによる量子もつれ光子対の時間相関検出に関して、今後のSN比の向上方法について議論した。その結果、非線形光学におけるポンプ光の抑制や発生効率の向上について、有益な議論を行うことができ、今後の研究の方向性について重要な示唆を得ることができた。
今回、コロラド大学での共同研究滞在の機会を活かして、近隣にある国立研究所や大学、NIST、JILA、CUの分野のトップクラス研究室を見学する機会を得た。
NIST (National Institute of Standards and Technology) は米国立標準技術研究所であり、計測と標準に関する世界のトップ研究が行われている。中赤外デュアルコム分光によるリモートセンシング・モニタリングや光時間転送、マイクロ波発生とマイクロキャビティに関する研究など多くの研究室を見学した。
JILAはCUとNISTの共同研究所であり、物理科学分野における全米有数の研究機関である。JILAではJun Ye教授の研究室を訪問し、同研究室メンバーからストロンチウム格子時計の実験系などの説明を受けて見学した。
また、コロラド大CUのScott Diddam教授の研究室を訪問し、中赤外領域の周波数コム光源、天文学への応用のための周波数コムを使った熱光スペクトルの測定、高い繰り返し周波数(10GHz以上)を持つアストロコムの開発、コムからのミリ波の発生などについて学んだ。
数多くの研究室を見学させていただき、訪問した研究室は非常に高水準で、幅広い先進的な研究分野に触れることができた。各研究室で行われている研究の多様性と、それぞれの専門知識の深さを知ることができ、貴重な素晴らしい経験となった。
今回、国際共同研究に参加し、非常に価値のある貴重な経験であった。異なる文化やバックグラウンドを持つ多くの研究者と交流することで、研究者としての多くの刺激を感じた。また自身の研究に関して、具体的な手法、新たな視点やアイデアを得ることができた。今回の経験を活かし、幅広い視点を持ちながら研究を進め、さらなる成果を生み出していきたいと考える。
最後に、多大なるご援助を賜りました貴財団に厚く御礼申し上げます。