令和5年度丸文財団国際交流助成によるご支援を賜り、2023年10月8日~10月12日にスウェーデンのヨーテボリにて開催された244th ECS Meetingに参加した。本国際会議は、電池からバイオセンサを扱うものまで幅広い部門に分かれており、電気化学に関する世界最高峰の国際学会である。244th ECS Meetingは、コロナ禍で中止となっていたヨーロッパ開催が再開された会議であり、世界中から多くの研究者が集まった。口頭発表のほとんどが招待講演であり、非常に質の高い発表が散見された。
本学会では “Exploration of DNA binding proteins as a versatile tool for fabrication of DNA-protein complexes and its application to biosensing system” という題目で口頭発表を行った。
【研究テーマ】 DNA-タンパク質複合体は、例えば分子認識能を有するDNAアプタマーと、化学発光等のシグナルを得ることができる酵素を組み合わせることで、センシング素子としての応用が可能となる。しかし、これまで化学量論的かつ効率的にDNAと任意のタンパク質との複合体を作製する手法は確立されていなかった。そこで本研究では、DNA共有結合タンパク質を探索し、化学量論的かつ効率的にタンパク質との複合体を創出する手法の確立を目指した。まず、文献情報を基にDNA共有結合タンパク質を探索後、それぞれ組換え生産、および特性評価を行った。続いて、選抜したDNA共有結合タンパク質を用いてグルコース酸化酵素との複合体を調製した。さらに、疾患マーカーのひとつであるヒトヘモグロビンを認識する核酸アプタマーと酵素との複合体を作製し、センシング素子としての評価を行った。
【討論内容】 質疑応答の時間では、たくさんのご意見・ご質問が絶え間なく続いた。DNA共有結合タンパク質の反応条件・反応特性についてのご質問をいただいた。また、ヒトヘモグロビンの検出時間と検出感度の関係性についての討論をおこない、本手法の臨床応用に向け、有用な知見を得ることができた。
本会議における口頭発表者は殆どが博士や教授であったことから、修士学生としての口頭発表に不安を覚えていた。しかし発表終了後には、オーディエンスの方から、研究内容へのお褒めの言葉や、ぜひその技術を使いたい、というようなお声もいただいた。さらに、本研究の発展に向けた有用な知見を得ることができた。様々なバックグラウンドを持つ研究者が集まる国際会議への参加を通じ、自身の研究が人の役に立つことや、さらに発展していく兆しを肌で感じることができ、研究への熱意が高まった。
さらに貴財団のご理解のもと、国際会議後にイギリスに立ち寄り、国際共同研究の打ち合わせを行った。研究のディスカッションだけでなく、食事の際に日本料理を振る舞うなど、異文化交流も活発に行うことができた。「国際会議」とは異なる「日常会話」の英語に触れることで、自身の英語力不足を痛感した。国際会議により高まった研究の熱意を、研究の発展に繋げられるよう、英語でのコミュニケーション力向上に向け精進していきたい。
最後に、本会議への参加にあたってご支援いただき、何ものにも代え難い貴重な経験をさせていただいた貴財団に心より感謝申し上げます。