国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
小宮 大輝
(東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻)
会議名
74th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE)
期日
2023年9月3日~8日
開催地
CENTRE DE CONGRÈS DE LYON, Lyon, France

1. 国際会議の概要

この度は電気化学に関わる幅広い分野を扱っているInternational Society of Electrochemistry (ISE) 会議に参加した。ISEの年次会は毎年異なる国で8-10月の間に開催されている。会員は70カ国以上から集まり、さらに40以上の地域セクションで構成され、参加者は1,000人を超える大規模な集会である。今回の74th年次会議は9月3日から9月8日にかけてフランスのリヨンで行われた。セクションの数は15以上であり、センサー技術、エレクトロニクス、エネルギー貯蔵・変換、などの分野が分かれていた。申請者はセクション15 “Electrolyte Effects in Electrocatalysis and Electrochemistry in Non-conventional Electrolyte”にてポスター発表を行った。


学会会場の外見

2. 研究テーマと討論内容

申請者は“Developing Mixed Buffer Electrolytes with Concentrated Chloride Ions for Efficient Overall Water Splitting"というタイトルでポスター発表を行った。

研究テーマ
海水電解は酸素発生反応と水素発生反応の両方の半反応が緩慢なため効率が悪く、さらに溶液の導電率が低いためオーミック電位損失が大きいという課題を抱えている。水素の大量生産に向け、適切な緩衝能と高い導電性を有する電解液の開発が近年課題となっている。
本研究では、新規で開発した、塩化物イオンを高濃度で含む高導電率なカリウム-ホウ酸/炭酸混合緩衝溶液を用いて海水pHに近い溶液pHで高効率かつ安定な水分解を実証した。本研究では、多くの研究者が避けていた塩化物イオンを効率向上に有効活用できることを見出し、電解質工学につなげている点で特色がある。

討論内容
特に、多く質問を受けた点は塩化物イオンの酸化反応に関することである。反応系内に塩化物イオンが共存していると、酸素生成反応と塩化物イオン酸化反応が競合してしまうため、有害な塩素ガスや次亜塩素酸が生成する。この副反応を低減するためのアプローチとして、二つの酸化反応の熱力学的電位差を利用することが、一つの解決策であることを共有した。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

数多くの研究者が出席する国際会議に参加し、自身の研究分野である水電解に関係する内容(試験プロトコル、セルセットアップ、触媒設計など)に関する最先端の情報を得ることができた。

申請者が発表を行ったポスターセクションは1時間半であり短い時間であったが、多くの研究者が興味をもって見にきてくださり、上記の様な盛んな議論ができた。国外の研究者と討論することによって、普段国内学会で聞かれない内容や、別の視点からのコメントをいただき、自身の研究の立ち位置や今後の研究テーマを考えるいい機会であった。

今回のISEは数年ぶりの現地開催であり、海外の研究者と英語でのディスカッションをすることができたこと、また、異国の文化に触れることができたことで非常に有意義な国際会議であった。このような、国際学会への参加に多大なご支援を受け賜りました丸文財団に心より感謝申し上げます。

令和5年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ