SPIE Photonics Westは1995年以来毎年開催されている世界最大のフォトニクス技術イベントです。今年は生物医学光学、バイオフォトニクス、産業用レーザー、オプトエレクトロニクス、微細加工、MOEMS-MEMS ( Micro Opto Electro Mechanical Systems-Micro Electro Mechanical Systems)、ディスプレイ、量子技術などの最先端の研究に関する100のカンファレンスと、4つの巨大な展示会(BiOS, LASE, OPTO, Quantum West)から構成されて開催されました。またカンファレンスでは約5,000件の技術プレゼンテーションが発表されました。
次回 Photonics West 2025は2025年1月25日~1月30日に開催予定です。
私は「Influence of flow rate and gas type with a novel nozzle capable of simultaneously gas flow and suction on weld quality in laser welding」と題して口頭発表を行いました。
レーザー溶接は、非接触で操作が簡単なことから、自動車製造などの分野で積極的に利用されています。特に、電気自動車の普及に伴い、銅やアルミの高品質溶接の需要が高まっています。しかし、従来のレーザー溶接では、スパッタや溶接ビードの不安定さなどの問題があります。そこで溶接効率の向上と溶接品質の安定化のためには、アシストガスが一つの解決策となります。本研究では、レーザー溶接部にガスを流すと同時に吸引できる、用途の異なる2種類の新しいノズルを開発しました。IRレーザーを用いた鋼の突合せ溶接では、レーザー光軸からのヒューム除去とアンダーカットの解消を、ノズルによる気流によって達成できました。また、ブルーレーザーを用いた銅のスポット照射では、気流によるヒューム制御が可能であることと、加工位置によって酸素含有量に差が生まれ、加工結果に影響を及ぼすことを確認しました。
本会議では、ガス吹付による溶融池縮小の原因が、ガス吹付による冷却現象だけでなく、ヒュームの除去により金属蒸気として嵩が減っているのではないかという意見をいただきました。そういった観点で考察をすることがいままでなかったため、溶接欠陥原因の排除における議論をより深めることができました。
本会議は6日間の開催で口頭発表とポスター発表がなされました。口頭発表では、会議テーマの種類が豊富でありながら、セッションごとに関連研究の講演がプログラムされており、同様の研究を行っている研究者と直接話すことや、興味ある新たな研究テーマの聴講が容易にできる環境でした。わたしは本会議に参加したことで以下の成果を得ることができました。
複数のセッションに参加し、レーザー溶接に関連する先端研究の情報を収集することができました。ポスターセッションでは発表者と研究内容に関して時間をかけて質問することができ、溶接に関する議論を深めることができました。また、展示会では世界各国から1,500を超える光工学関係の企業が出展しており、私の研究内容と関係する最新製品等を多く見ることができました。光工学関係の展示会として世界最大級であり、いままでカタログやホームページ上でしか見ることのできなかったレーザー装置や光学装置を、企業の方の実演と詳細な説明とともに見ることができ、今後さらなる研究を行っていく上で、多くの観点を得ることができました。
最後となりますが、本学会の参加にあたり、貴財団に多大なるご支援をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。今後とも国際交流を含めた研究活動に邁進してまいります。