IEEE/SICE SIIは、システムインテグレーション (SI) の現状と将来展望を提示するシンポジウムです。SIは重要な技術の一つであり、ハードウェアとソフトウェアの統合は、新世紀における産業システムや社会システムの問題を解決するために特に重要です。本シンポジウムでは、SIに関する新しい研究や産業応用に焦点を当て、SIの有効性を向上させるためのアプローチや方法論について議論します。これまでに、世界各地で15回開催されており、産業界の専門家、研究者、学識経験者が、フロンティア技術、画期的で革新的なソリューションやアプリケーションに関するアイデアや経験が共有されてきました。
2024年のIEEE/SICE International Symposium on System Integration (SII 2024) は、SIに関する16回目のシンポジウムとなります。33か国から1,028名の著者が参加し、350件の発表がなされました。
本学会において、“Detection of Exposed Nerves in Two Individuals In Vivo and Unexposed Nerves Ex Vivo with Near-Infrared Hyperspectral Laparoscope”という題目で口頭発表を行いました。
私の研究では、手術中に生体深部に存在する重要な組織を識別できる世界初の内視鏡デバイスを開発しています。対象としているのは、癌摘出手術の一つである、腹腔鏡下手術という術式です。開腹手術と比較して、患者への負担が小さいため主流となりつつありますが、現状の腹腔鏡では生体組織の表面で反射する可視光しか受光することができず、深部に存在する重要な神経や血管を認識することができません。これにより、手術時間の増加や組織損傷による患者のQOL低下が懸念されます。
そこで我々の研究グループでは、可視光よりも長波長の近赤外領域に着目しました。この領域の光は生体を透過する性質を持っており、分子振動が起こる波長の違いが表れやすいことから、吸収スペクトルを測定することで深部に存在する組織の同定が行える可能性があります。本研究では、光源や制御システムの開発を通じて、手術中に近赤外光スペクトルを取得できる世界初の硬性鏡型デバイスを実現しました。生きている状態のブタを用いた組織イメージングの実験等を通じて、開発したデバイスの性能検討について報告しました。
10分間の発表の後、4分間の質疑応答が行われました。腹腔鏡以外に軟性内視鏡でも応用可能かという展望や、組織識別に用いられる機械学習方法の妥当性に関しての質問を受けました。普段の研究活動のみでは得ることができなかった思考が得られたと感じています。
対面での国際会議への参加は初めての経験でしたが、非常に充実した経験ができたと感じています。自身の発表を通じて、様々な分野の専門家との議論によって、思考を広げて研究する重要性が再確認できたと感じます。
また、他研究者の発表に対して質問することを通じて、手法の最適性や考察における解釈の広げ方を勉強することができました。各研究者それぞれが持つ、解決したい課題への想いを感じ、自身の研究活動の励みになったと感じます。
学びとして、分からない事はその場で解決するという価値観を身に着けることができたと思います。専門外の研究に関しての議論を英語で行う上で、完璧に意図を伝えあう事が難しいと感じることがありましたが、それでも妥協せずに表現を変えながら理解することを諦めない姿勢が重要だと感じました。
世界遺産であるハロン諸島という開催地で、現地民や観光客との関わりを経て能力的にも人間的にも成長できる経験ができたと思います。
本国際会議への出席にあたり、貴財団より多大なご支援を頂きました。心より感謝申し上げます。