Acoustical Society of America (ASA) は1929年に設立された国際的な科学学会です。音響学とその実用的な応用に関する知識の生成、普及、促進を目的として活動しています。今回はNashville (TN) のGrand Hyatt Nashville Hotelにて2022年12月5日から9日の5日間にわたり開催されました。
次回のASAはChicago (IL) にて2023年5月8日から12日の5日間にわたり開催される予定です。
Nashvilleは音楽業界の中心地として知られ、「ミュージック・シティ」というニックネームがつけられています。市街地にはライブ音楽を聞きながら、飲食を楽しめるバーやレストランが多く並び、歩いているだけで、生の音楽が聞こえてくる陽気な街でした。
本会議にて“Noncontact Rotation of a Small Object Using Ultrasound Standing Wave and Traveling Wave”という題目で発表を行いました。物体を非接触で浮揚させ、自転運動を引き起こさせる新たなアプローチの検討を行いました。
超音波の力を用いることにより、試料を非接触で搬送・制御することができます。物を浮かす方法として、空気圧、静電気力、磁気力を用いたものがありますが、装置が大規模、試料に制限があるなどの問題がありました。しかし、超音波を用いることで試料に制限はなく、商用の電源を用いて駆動させることができるため、装置がコンパクトであるというメリットがあります。本報告では、円形たわみ振動板と反射板を使用し、超音波による微小物体の非接触高速自転について実験的に検討を行いました。これまでに、振動板に対して反射板を傾けて設置することにより、進行波と音響流を傾斜方向に発生できることをシミュレーションと実験によって確認されています。そこで本報告では、この知見を活かし、振動板・反射板間の空中に超音波定在波と進行波の両方を発生させることにより、微小物体の非接触浮揚および自転を試みました。これらの実現により、容器を必要としない非接触での流体搬送・混合・分注技術の実現によって、新たな物性測定や試薬製造、超高純度の微少量のハンドリングが可能となり、より高機能な流体プロセス技術への展開が期待されています。
実験系の問題点であった「一意に回転方向を定める方法」について質問をうけ、現時点で考えられる解決法をPCの画面を見せるなどして、つたない英語ながらお答えすることができました。そして、質問されるばかりでなく、一緒に解決法を考えていただけるなど、とても温かい雰囲気で発表や質疑を行うことができました。
会議では5日間にわたってオーラルセッションとポスターセッションが行われました。その中で1日目にオーラル、4日目にポスターの2つのセッションでの発表を行いました。あらゆる分野を専攻している方々の、様々な角度からの意見に刺激を得ることができました。ポスター発表において審査員との発表・質疑の時間があり、点数表を用いたフィードバックをいただくことができ、自分の足りない部分とうまくいった部分を客観的に知ることができました。
研究発表以外においても、学会が開催しているイベントに積極的に参加しました。学生の交流会やディナーの会食など、いろいろな国の参加者と関われるイベントでした。特にその中でも、ジャムセッションというイベントが強く心に残っています。ホールに参加者が集められ、紙に名前、演奏できる楽器、演奏できる曲のジャンルを記入します。そして、即興でバンドができ上がり、舞台で演奏をするというイベントでした。私もドラムの演奏経験が少しあったため、参加させていただきました。あらゆる国籍、あらゆる研究分野の人々と言葉だけではなく、音楽で交流ができたというのも音響学の国際会議ならではと感じ、深く感心しました。
初めての海外、初めての国際会議で、新鮮なことばかりでとても有意義な時間を過ごすことができました。
最後に、ご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団に心より感謝いたします。