オーラルセッションの様子
Gatherアプリ画面
2016年から2年ごとに欧州で開催され今年で4回目となるIEEE 2022 International Conference on Dielectrics がイタリアのパレルモで7月3日から7月7日まで開催された。現地で122名、オンラインで78名の研究者が参加した。論文数は全体で194件(オーラルセッション41件、ポスターセッション153件)、日本からは16件であった。当該分野の国際会議としては最大規模であり、大学・メーカ問わず、世界中の専門家が集まり誘電・絶縁材料に関する議論や意見交換が活発に行われた。
会議は対面形式とオンライン形式のハイブリットで行われた。オーラルセッションの発表方法は日本で行われる学会の形式とほとんど同じで、発表者が前に登壇し、大きなスクリーンに自分の研究内容を映しながら説明を行っていた。会議の内容は特に固体絶縁材料の絶縁特性の研究や直流高圧送電に向けたケーブルの絶縁構成などの内容が多く見受けられた。
ポスターセッションではGatherアプリというバーチャル空間でポスターの閲覧ができるシステムを採用しており、すべてオンライン形式で行われた。
会議の合間にはコーヒーブレイクが用意されていた。5日間の会議の内、初日にレセプションが行われ、4日目に晩餐会が開かれた。
ポスターセッション<オンライン>の様子
(手前が報告者)
研究テーマ
報告者らはカーボンニュートラル実現に向けて環境に全く影響のない純水を、現在主に使用されている鉱油の代わりに変圧器の冷却絶縁材料として使用するための基礎研究を行っている。純水の絶縁耐力は鉱油の1/2程度であることから、変圧器の冷却絶縁材料として使用できる可能性がある。しかしながら、純水は鉱油より抵抗率が6桁程度低いため、そのままの状態で変圧器に適用した場合、漏れ電流が生じて電力損失につながる。したがって、純水の抵抗率を少なくとも3桁以上向上させる必要がある。鉱油中にナノ粒子を添加することで絶縁耐力が向上することが報告されている。しかし、ナノ粒子は凝集すると絶縁耐力低下の要因となる。そこで報告者らはファインバブル(FB)と呼ばれる直径100μm未満の微細な気泡に着目した。FBは液中に長期間浮遊し続け、それらは負に帯電することから凝集しない。FBの添加量を変えて純水の抵抗率と絶縁耐力に与える影響を調査している。
討論内容
報告者は7月6日に「窒素および空気雰囲気下における窒素ファインバブルの生成時間と静置時間が純水の抵抗率と負極性雷インパルス絶縁破壊電圧に与える影響」の題目にてポスター発表を行った。発表時には4名ほどの聴講者が訪れ、報告者のポスターを閲覧していた。残念ながら、報告者への質問は寄せられなかった。
会議場前(右が報告者)
バンケットの様子
発表と聴講を通して、専門分野の最新の研究動向を知ることができた。主に固体絶縁材料の絶縁特性の研究や直流高圧送電に向けたケーブルの絶縁構成などの内容が多く取り上げられていたことから、電力機器の小型化や損失低減のための対策が考えられていることを知った。他には東京大学の博士課程の学生がオーラルセッションでカンペなどを一切見ずにアドリブを交えながら発表していた姿にとても感心し、今後の研究生活や学会発表にとり入れたいと考えた。
7月5日の午後からチェファルーでのツアーに参加しチェファルーの街並みや文化などに触れる貴重な体験ができた。
7月6日の晩餐会ではイギリスの大学のタイ出身の学生とドイツ出身の学生との食事と会話を楽しんだことで海外の研究者と交流を深める貴重な経験を積むことができた。
パレルモに到着した当初は報告者がLost Baggageし手荷物カウンターで報告者自身が英語で手続した。今回の海外渡航を通して、英語で話さなければならない窮地に立たされたおかげで報告者自身の英会話力が上達できたと感じた。