Material research society (MRS) は様々な分野の材料に関する研究が報告される国際会議である。MRSは年に2回開催されており、春の会議は様々な場所で開催され、秋の会議は、毎年アメリカのボストンにて開催されている。今回の2022 MRS Fall Meetingは11月27日~12月2日の6日間にわたってボストンのハインズコンベンションセンターで開催された。
今回参加した会議では、「Broader Impact」、「Characterization」、「Materials Computing and Data Science」、「Energy and Sustainability」、「Electronics, Optics and Quantum」、「Nanomaterials」、「Soft Materials and Biomaterials」、「Structural and Functional Materials」の計8つの分野分けが行われており、さらにそれぞれの分野が細かく分類され、合計53のセッションに分けられ会議は進行した。
会議は、朝から夕方に向けてそれぞれのセッションでの口頭発表が行われ、8時から10時までの夜間にポスターセッションが行われた。ポスターセッションはワインやビールといったアルコールが会場で振る舞われ、飲酒しながらのラフなセッションとなっていた。また、日中の口頭発表の途中にコーヒーブレイクの時間があり、コーヒーやアイスティーが振る舞われ、研究者同士の交流が行われた。
著者は2日目の夜間のポスターセッション、「Energy and Sustainability」の「Materials, Modeling and Technoeconomic Impacts for Emergent Applications of Large-Scale Hydrogen」のセッションにて発表を行った。
次回のMRS(2023年4月10日~14日)の開催地はアメリカのサンフランシスコの予定である。
今回は「Highly Active Cobalt Manganese Oxyhydroxide added Pt/C Catalyst as ORR for PEFC」という題でポスター発表を行った。
水素と酸素のみで作動するクリーンな水素燃料電池を広く普及することは、脱炭素社会の実現において鍵となる。特にモビリティでの活用が期待される固体高分子形燃料電池 (PEFC) の普及は重要視されている。しかし、PEFCの十分でない酸素還元反応 (ORR) 触媒の活性は白金の使用量を増加させ、それに伴うコストの増大はPEFCの普及を妨げている。
今回はPEFCのORR性能の向上において、過去に報告された金属酸化物とカーボンのハイブリッド触媒に着目した。このハイブリッド触媒は金属酸化物と白金の相互作用にて白金のORR性能の向上と耐久性の向上が期待される。加えて、添加材料として水電解に使用されているコバルト-マンガン水酸化物とコバルト-マンガン酸化物の利用を検討した。それらの材料は酸化スズナノ粒子に無電解めっきすることで表面にコーティングして使用した。作製した触媒は、従来の触媒と比較して約2倍の質量活性と約4.5倍の面積比活性を達成することに成功した。また、ORRにおいての耐久性の向上も確認された。
発表では、材料に関する学会ということもあり燃料電池の知識を持たない人も訪れた。そのため、物性評価と分析に関する質問が多かった。自分の主分野が電気化学ということもあり、物性に関する理解の浅さが浮き彫りとなったが、非常に勉強となる討論が行えた。
今回の学会では、自身の発表以外のポスター発表と口頭発表も聴講した。発表は全て英語で行われるため、理解できないこともあったが最新の研究はどれも新鮮で非常に興味深いものであった。自身の発表においても物性評価や分析において議論することで理解を深めることができた。学会への参加は、新たな知見が得られ、有意義な時間であった。
また、自身の発表や他の講演者の発表の聴講、私生活でのコミュニケーションを通して、自身の英語能力の低さを実感した。しかし、英語のみでやりとりするという経験は非常に貴重な経験となった。今後、円滑に英語でコミュニケーションが行えるように英語の学習を行いたいと考えている。
最後に、今回の国際学会の参加にあたり、ご支援をしていただいた一般財団法人丸文財団様に心より感謝申し上げます。