丸文財団国際交流助成に選出いただき、IZC-2022(International Zeolite Conference 2022)に参加した。
IZCは4年に1回開催される、ゼオライト・触媒分野の国際学会である。今回の開催地はスペイン・バレンシアであり、現地のバレンシアカンファレンスセンターにおいて2022年7月3日から7月8日までの5日間行われた。スペイン第3の都市であるバレンシアは、 地中海に面しており、太陽が似合う街として知られている。旧市街地には歴史的建造物も多く、一年を通して多くの観光客が訪れる都市でもある。学会では世界各国の研究者が一堂に会し、口頭発表や講演、ポスター発表等が行われ、活発な議論が交わされた。また研究者同士の交流を深めるイベントも連日開催された。
次回はメキシコ・カンクンにて開催されることが決まっている。
私は、「Synthesis of Mg and Zn doped ZSM-5 for dehydroaromatization of ethane」という研究テーマでポスター発表を行った。本研究は、石油化学において重要な物質であるベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)を、安価かつ安定的に製造するために必要な研究である。BTXはPET樹脂や繊維の原料となり、今後需要が増加する物質である。従来はナフサを用いて合成されてきたが、資源枯渇の懸念と次世代燃料への移行を背景として、天然ガスに豊富に含まれるエタンから直接BTXを合成する方法が近年注目されている。この合成反応では、多孔質材料であるゼオライトが触媒として用いられる。ゼオライトは、シリカとアルミニウムを主成分とし、規則的な細孔を持つ物質である。中でもMFI型と呼ばれるゼオライトは、細孔径がBTXと同程度であることから、BTX合成に優れたゼオライトとして知られている。またゼオライトの細孔には陽イオンが存在しており、その陽イオンが交換するイオン交換能を持つ。さらに、陽イオンがプロトンの場合は、強い酸性を示す。先行研究により、このゼオライトのプロトンを亜鉛イオンに交換することで、エタンからBTXへの変換量が増加することが示されている。一方プロトンは強い酸であるため、亜鉛イオンに交換されていないプロトンによって、細孔径よりも大きい副生成物への反応が進行し、細孔を塞ぎ、触媒の劣化が速く進行するという課題が生じる。そこで本研究では、亜鉛イオンを導入したMFI型ゼオライトに対して、マグネシウムを導入することでプロトンを不活化し、BTX生成量の増加と、触媒劣化抑制を目指した。触媒を合成し、反応試験によって触媒性能を調べたところ、従来の触媒よりもBTX生成量が増加し、触媒寿命も向上する結果が得られた。今後は触媒のさらなる性能向上を目指し、よりBTX生成に優れ、寿命の長い触媒開発に取り組む予定である。
現地開催であったため、世界中の同じ研究分野の研究者の方々のポスター発表や口頭発表を直接聴講できたことが大変良い経験となった。世界で行われている興味深い研究や、自分の研究テーマと近い研究など幅広い知識を得られたこともとても良かった。また多くの人のポスターを見た経験から、研究内容・研究成果についてよりインパクトに残し、人々を引き付けるポスターを作るためにはどのように工夫すれば良いかなど学びを得られた点も良かった。一方で自分自身のポスター発表では、研究内容についての議論を英語で行うことに難しさも感じた。相手に英語で伝えられた部分もあればそうでない部分もあったため、今後も様々な国際学会に参加し、伝え方や英語力を磨いていきたいと考えている。
今回の国際会議の出席にあたり、貴財団よりご支援をいただきまして心より御礼を申し上げます。