Applied Superconductivity Conference (ASC) は2年ごとにアメリカで開催され、超伝導に関連する材料研究やデバイス技術など様々な分野の研究が発表される国際会議である。今年のASCはハワイ州ホノルルのHawaii convention centerで10月23日から10月28日の6日間にわたって開催された。発表分野は超伝導体を使用したデバイスと技術に焦点を当てたElectronics、超伝導マグネットや超伝導ケーブル関連するLarge scale、超伝導薄膜や線材など材料に焦点を当てたMaterialsがあり合計で1,700件程の研究が報告された。
今回、“Development of High-Temperature Superconducting Quad-Band Bandpass Filter for Radio Astronomy in the UHF Band”という題目でポスター発表を行った。
現在、センチ波やメートル波といった長波長の電波を唯一網羅する世界的な電波天文の国際計画であるSKA (Square Kilometer Array) 計画が進行しており、宇宙物理の未解決の謎の解明が期待されている。これに対して、日本では国立天文台を中心としてUHF (Ultra High Frequency) 帯域における広帯域受信機の開発を目指している。しかし、UHF帯域では携帯電話や衛星通信などのRFI (Radio Frequency Interference) が多く存在するため連続して広帯域に電波観測を行うことは困難である。そこで、国立天文台が要求する観測所付近のRFIが存在しない帯域をまとめて広帯域に電波観測が可能な超伝導クワッドバンド帯域通過フィルタ (QB-BPF) を提案した。QB-BPFは2つのデュアルバンド帯域通過フィルタで構成され、外部Q値の設計自由度が高い給電構造を考案した。作製したQB-BPFのシミュレーション結果と測定結果はよく一致しており、RFIの問題を解決できるQB-BPFを報告した。
この発表には多くの研究者の方々が聞きに来てくださり、議論を交わすことができた。フィルタの設計方法について興味を持っていただくことが多く、より詳細な設計手順やフィルタ構造について討論を行った。
ポスター発表を行う中で多くの研究者の方々に質問をしていただいて英語でやり取りを行えたことや超伝導に関連する様々な最新技術の発表を聴講できたことが貴重な経験となった。発表を聴講する中で超伝導の応用技術や材料の知識を得ることができた。今後は自身の研究分野に限らず他分野の知識もさらに深めていきたい。また、発表の中で相手の質問を聞き取ることができてもうまく英語で返答できない場面があり、自身の英語能力の不足を実感した。この経験をもとに今後の英語学習に取り組んでいきたい。
最後に、本会議の参加にあたり多大なるご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。