ECIS2022は、ヨーロッパのコロイド界面科学分野の最高峰の学会であるECISが主催し、毎年開催される主要なコロイド界面科学の国際学会である。第36回 ヨーロッパコロイド界面科学国際会議 (ECIS2022)は、ギリシャ国ハニア市ミノアパレスリゾートホテルで開催され、世界の一線級の研究者が一堂に会して、研究発表・情報交換を行った。
発表件数は、約677件(口頭発表290件、ポスター発表387件)であり、参加者は約800名である。4パラレルセッション方式で発表が行われ、活発な研究討議がなされた。
今回の学会において、私は主に、レオロジー関係およびコロイド分散系関係のセッションに参加した。磁気温熱療法や磁気マイクロスイマーに関する貴重な知見が得られた。
研究テーマ:
Aggregation phenomena of magnetic cubic particles in an alternating magnetic field (Brownian dynamics simulations)
討論内容:
本研究では、磁気温熱療法への応用を念頭において、振動磁場中におけるキューブ状磁性粒子からなる分散系を対象とし、凝集形態の転移現象の解明をブラウン動力学法により試みた。具体的には、粒子間の磁気的な相互作用、振動磁場の強さなどの要因が、キューブ状磁性粒子の凝集形態の内部構造にどのような影響を及ぼすのかに着目し、振動磁場中における凝集体の挙動および磁性粒子の磁気モーメントの磁場への追随性について検討した。
発表後には、シミュレーションで想定しているキューブ状磁性粒子がどのような種類のものであるのか、本研究がどのような応用領域へ貢献するのかなどの質問をいただいた。また、シミュレーションの結果に関することだけでなく、シミュレーション・プログラムの構築に際してキューブ状粒子の斥力層をどのようにモデル化しているのかなどの議論を行った。
本学会の参加者の多くが化学者ということもあり、磁気温熱療法およびマイクロスイマーに関する実験的研究の動向を探ることができた。ポスター発表中には、毎年私の発表に興味を持って聞きに来てくれるPhD学生から、「結婚しヨーロッパからアメリカに引っ越す」とのご報告も受けた。
また、民宿場所が事前に調査した場所とは異なる位置にあり迷子になったが、現地の方に助けてもらい事なきを得た。様々なコミュニケーションを通じて自身の英会話スキルを高める機会を得ることができた。
最後に、このような貴重な経験をするにあたり、ご支援をいただいた丸文財団様に心より感謝申し上げます。