International Workshop on Nitride Semiconductors (IWN)は、窒化物半導体に関する国際会議である。本会議は隔年で開催されており、参加者は約800人を集めている。今回は本来2020年に開催される予定であったが、COVID-19の影響による2年の延期を経て、2022年にベルリンで開催された。窒化物半導体に焦点を当て、基礎物性、電子デバイス、成長、新奇材料およびナノ構造、光デバイスの5つのテーマに分かれて活発な発表と議論を行った。
本会議が行われたベルリンはドイツの北東部に位置する首都かつ同国最大の都市であり、東西冷戦時代の象徴となるベルリンの壁があることで有名である。また、街中のいたるところで自転車やキックボードでの移動が盛んだった。
次回のIWNは2024年11月にハワイのオワフ島で開催される。
申請者は、“HVPE growth for vertical GaN p-n junction diodes with high breakdown voltages”というタイトルで招待講演を行った。
GaNは、次世代パワーデバイスとして有望な半導体であり、縦型パワーデバイス用途への研究開発が活発に行われている。デバイスの高耐圧化に向けて、低ドーピング密度制御されたGaN厚膜が必須となる。つまり、高純度なGaN厚膜のエピタキシャル成長条件の確立が必須となる。申請者は、そのデバイス構造の成長手法としてハライド気相成長(HVPE)法に着目し、HVPE法によるGaN縦型パワーデバイス構造の成長手法の確立に向けて研究を行ってきた。本会議では、その研究状況の近況について報告を行った。
本研究の中で最大の成果は、HVPE法によるMg添加p型GaN成長手法を確立した点である。p-n接合は、デバイス作製に必須であるにも関わらず、HVPE法によるp型GaNは実現されていなかった。申請者はアクセプタとなるMgドーピング原料としてMgOに着目し、MgOを利用した新規p型ドーピング手法を提案することによってHVPE法によるp型GaNの実現とアバランシェ破壊を有する縦型p-n接合ダイオードのHVPE法による作製を世界で初めて実証した。
発表では、多数の質問をいただき有意義な議論を行うことができた。また、本会議の成長テーマにおける総括においても本研究内容が紹介された。
本会議は、窒化物半導体分野において最大規模の国際会議であることから、世界各国の研究機関の発表を聴講することができた。特に、ScAlNやBNといった近年注目されている新しい窒化物半導体に関する研究発表が目立っており、研究分野全体の大きな流れの移行を肌身で感じた。
本会議は、COVID-19の流行以降初めて開催された完全対面形式の会議であったため、コロナ禍において停滞した人的交流も活発に行うことができた。古くから親交のある海外の研究者との久しぶりの再会のみならず、Cornell大学やポーランドの高圧物理研究所の研究者並びに博士課程学生と新たな親睦を深めることができた。この経験はオンラインのみでの会議では得難く、対面での会議ならではの経験だと思う。
最後に、今回ご支援いただきました一般財団法人丸文財団にこの場を借りて心より感謝申し上げます。