IFAC Symposium on Mechatronic Systems (Mechatronics) はInternational Federation of Automatic Control (IFAC) が主催し3年に1回開催される学会の1つであり、機械と電気を組み合わせたメカトロニクス系と分類される機器の設計をトピックとした国際会議である。制御分野を中心にモデリング、システム同定、センシング、アクチュエーション等の学際的な領域について、露光装置、ロボット、自動運転車、ドローンなど高度な制御の必要なシステムへの応用に関する最新の成果が発表される。
今回、The 9th IFAC Symposium on Mechatronic Systems (Mechatronics 2022) は日本機械学会主催のThe 16th International Conference on Motion and Vibration Control (MoViC 2022) との共催で9月7日から9日までアメリカ合衆国ロサンゼルスUniversity of California, Los Angeles (UCLA) で開催された。MoViCは振動解析とその制御を主として扱っており、重複する分野と異なる分野のそれぞれのコミュニティの相乗効果を促進するために合同で開催された。
今回の会議では2つの会議合計で世界各国から約180件の発表が行われた。自動運転車の制御やモデル予測制御など最新の話題に関する発表が数多くあり、発表の合間などにも活発な議論が行われていた。COVID-19でオンライン学会が中心になっていたこともあり数年ぶりの現地参加であったという参加者も多く存在し、実際に世界の一流の大学の研究者と交流を行う意義を感じることができた。
次回の会議の開催は2025年であり、詳細は来年開催されるIFAC World Congressで発表される。
本会議では "Achievable Thrust Expansion Control at Current Saturation of Variable Pitch Propeller for Drones" という題目で発表を行った。本研究はプロペラの主モータの電流制限が存在する状況でのドローンに適用することを想定した可変ピッチプロペラの制御手法に関する研究である。可変ピッチプロペラは翼の角度(ピッチ角)を制御可能なプロペラであり、ドローンにおける運動制御の応答性や航続距離の短さを改善する技術として、特に産業応用や空飛ぶ電動モビリティでの利用が期待される。
これまでの、高い周波数帯域をピッチ角、低い周波数帯域を回転数に振り分ける周波数分離を用いた制御手法ではピッチ角のモータへの干渉を電流により補償している。電流制限下では補償が行えないことにより干渉が問題となる。この干渉について空力的な推力と反トルクのモデルをもとにモデル化を行い、電流の最大値とそれを考慮したピッチ角の制御を提案することで干渉の問題に対応した。特に干渉の影響が顕著となる推力の最大領域に状態を遷移する場合に適用することにより、出力可能な最大推力の拡張を達成するとともに推力が減少する現象を解決できることを実験によるケーススタディで検証した。
発表後にはモータのモデルの妥当性など提案の手法について関連した研究を行っている他の研究者からコメントをいただき、議論を深めることができた。
会議では3日間にわたって3つの部屋で並行して発表が行われ、それらに関する議論が行われた。その中で2日目の "Motion Control III" のセッションで発表を行い、20名以上の研究者の方々に発表を聞いていただくことができた。本セッションやほかのセッションでほかにもドローンに関する研究の発表があり、同分野の最新の研究について知るとともに最先端の研究を行っている研究者と議論を交わした。また発表のセッション間では多くの研究者がコーヒーを飲みながら活発に議論されており、様々な研究者が一堂に会して議論する現地での国際会議の意義を強く感じた。
また、精密機械加工や医療機械のメカトロニクスや制御で有名なUCLAの研究室、ロボティクスや精密制御で有名なUC Berkeleyの研究室の方々など多くの研究者と深く議論を交わすことができ、最先端の研究を行っている研究者の方々と関係を構築する一助として非常に有意義な機会となった。
最後に、本会議の参加のために多大なご支援をいただいた一般財団法人丸文財団に厚く感謝御礼申し上げる。