The 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS 2023) はIEEE主催のMEMS技術に関する年次国際会議で、第36回となる今回は2023年1月15日から19日の5日間にわたり、ドイツ、ミュンヘンのScience Congress Center Munichで開催されました。
本会議は新規性を重視するMEMS技術分野における最も権威のある国際学会のひとつであり、投稿された636件の論文のうち約49%の314件の論文が採択され、内訳は口頭発表が70件、ポスター発表が244件でした。
マウスの旋回運動を制御するための柔軟なブレインコンピュータインターフェースや、サブミリメートルの空間分解能を持つ冷温感検出機能を搭載した触覚センサなど、独創性の高い優れた研究発表が行われました。
次回のIEEE MEMS(2024年1月21日~25日)の開催地はアメリカのオースティンで開催されます。
本会議では、“LIG-based multi axial tactile sensor utilizing rotational erection system”というタイトルで口頭発表を行いました。
本研究では、ロボットの制御や人間の触覚の評価などに用いられる三軸触覚センサを、レーザ加工による力センサ製作プロセスと切り紙・折り紙構造によって実現しました。
レーザ加工による力センサ製作にはLaser・Induced Graphene (LIG)と呼ばれるポリイミドフィルムにCO2レーザを照射することで得られるグラフェンを用いています。このグラフェンはひずみによって電気抵抗が変化する性質があるため、ピエゾ抵抗素子として用いることができます。よって、斜立した三本のカンチレバー構造の表面にLIGを形成しゴム材料に埋めることで、加わる力によってカンチレバーの変形方向と変形量を感知することができ、三軸触覚センサとして利用できます。
斜立した三本のカンチレバー構造を形成する手法として、Rotational erection system (RES)と呼ばれる切り紙・折り紙構造を用いました。このRESは折れ線と切れ目から構成される平面構造で、平面形状と立体形状という二つの状態を可逆的に行き来できる性質を持ちます。また、一度外力を加えることで立体形状に変形し、外力を外してもその姿勢を維持します。よって、RES構造の表面にLIGを形成することで、簡単に三軸触覚センサが実現でき、製作した触覚センサは三軸の力を計測できました。
自身の発表では、LIGの再現性やばらつき、製作プロセスについての質問を受けました。LIGをベースとした触覚センサ製作は昨年提案したばかりの手法であり、製作プロセスの精度面や再現性などに多くの課題が残されているため、さらにプロセスを洗練できるように研究に励みたいと思いました。
今回の学会では、口頭発表やポスター発表において積極的にディスカッションすることで、MEMS分野の最先端の知見を深めることができました。また、隣接するミュンヘン工科大学の見学を通じて、日本と海外の違いを実感した一方で、海外留学への憧れがより強くなりました。
対面での国際会議、口頭発表はどちらも初めての体験でありとても緊張しましたが、大変貴重な経験になったと思います。また、同年代の研究者との交流がとても刺激になり、今後もより一層研究に励みたいと思いました。
最後に、今回の国際学会の参加にあたり、ご支援をいただきました一般財団法人丸文財団様に心より感謝申し上げます。