国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和4年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
中岡 夏海
(同志社大学 大学院理工学研究科 電気系超音波エレクトロニクス・応用計測研究室)
会議名
183rd Meeting of the Acoustical Society of America (ASA)
期日
2022年12月5日~9日
開催地
Grand Hyatt Nashville Hotel, Nashville, Tennessee, USA

1. 国際会議の概要


会場の様子

Acoustical Society of America (ASA) は、アメリカ物理学協会の主要メンバーであるアメリカ音響学会が主催する音響に関するすべての分野を含む国際会議であり、1929年に設立されました。音響学とその実用的な応用に関する知識の生成、普及、促進を目的として活動しています。今回はNashville (TN) のGrand Hyatt Nashville Hotelにて2022年12月5日から9日の5日間にわたり開催されました。例年1,000人以上もの研究者が参加し、今回は並行して8分野のセッションが行われました。また、様々なデバイスの企業のブースが並んでおり、研究に使用する機材について相談することもできました。

2. 研究テーマと討論内容

本会議にて“Thin ultrasound non-contact sensor using flexural vibration”という題目で発表を行いました。内容はたわみ振動による放射インピーダンスの変化を利用した超音波センサの評価です。

現在、携帯電話やタブレット端末などの電子機器の発達に伴い、感染症対策も相まって、タッチレスディスプレイの開発が喫緊の課題として重要視されています。タッチレスセンサには、光センシング式や静電容量式などがありますが、部品点数が多く、信号処理や製造工程が複雑という課題があり、シンプルで頑健な構造のセンサの実現は難しい状況です。

そこで本報告では、単純な構造で実現可能な、板のたわみ振動を利用した超音波式のタッチレスセンサを提案しました。まず、私たちは振動する板の上方に物体を設置すると、物体の位置によってたわみ振動を駆動する圧電素子の電気特性が変化することに着目しました。詳細な実験により、振動板から放射された音波で空気中に定在波音場が生じると、たわみ振動を駆動する圧電素子の電気インピーダンスが劇的に上昇すること、そして、その値が物体の位置に依存することを見出しました。この電気インピーダンスの変化は、素子に流入する電流値で評価できることから、圧電素子の電気特性を計測するだけで、2次元的に振動板情報の物体位置を検知できます。

研究内容は全く新しいセンシング手法の提案であり、具体的な計測手法やメカニズムについて質問を多くいただきました。多くの方々に興味を持っていただき、議論を重ねる中で、本手法の感度を向上させるための適切な圧電素子や、計測のSN比改善について深い知見を得ることができました。特に、圧電デバイス開発専門家と長時間にわたって圧電素子の特性を議論する機会があり、大変勉強になりました。とても温かい雰囲気中で発表や討論を行うことができました。

 
オーラル・ポスターセッションの様子

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

会議では5日間にわたってオーラルセッションとポスターセッションが行われました。私は、4日目にオーラルとポスターの2つのセッションで発表を行いました。発表内容と異なる分野で研究をされている方々からも、様々な視点でコメントをいただき、研究者としての視野が広がりました。ポスター発表では、審査員の方々による発表・質疑の時間があり、採点表の形でフィードバックをいただきました。自身の研究内容だけでなく発表方法についても、客観的に評価していただいたことは、とても貴重な経験でした。


学生交流会の様子

また、学会による様々なイベントに積極的に参加しました。この学会では学生同士の交流会や会食(レセプションパーティー)など、いろいろな国の参加者と交流できるイベントが毎晩開催されていました。学生同士の交流会では、食事をしながら趣味や研究について熱く語り合うことができました。海外の学生生活を垣間見ることができただけでなく、様々な研究分野について深い知識を持つ学生が多くいたことにとても驚きました。博士後期課程に在籍する学生が多く、博士前期課程の私にとって、とても視野が広がる機会でした。交流会後には、仲良くなった各国の学生の研究発表を聞きに行ったり、自身の発表を聞いてもらえたりと、交流を深めることもできました。もちろん、他大学の教授の方々とも直接お話しすることができ、研究者としての課題や進路など、具体的に相談することができました。これらのコミュニケーションでは言語の壁を感じませんでした。つたない英語でもボディランゲージや熱意があれば思いは伝わるということを、身をもって体感しました。

最後に、ご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団の皆様に心より感謝いたします。

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