MNE-ESはMicro and Nano Engineering Conference (MNE) が今年度はEurosensorsと共同開催された国際会議である。MNEは1975年に初めて開催し、今回はベルギーのルーヴェンで開催され48回目を迎える。毎年欧州で開催され、参加者約700人のマイクロ・ナノ工学とその応用分野に関する国際会議である。具体的なトピックとしては、最先端のEUVリソグラフィを始めとする微細パターニング、ナノ構造や表面特性、物理アプリケーション向けの製造・システム統合、またバイオ・化学センサ等を駆使したライフサイエンス・化学・食品分野への応用の4つのテーマに焦点を当てている。
今年度はEurosensorsとの共同開催ということもあり、初日のチュートリアルを合わせて計5日間に渡り、最新の研究成果発表が行われた。原則では対面での会議を目的としているものの、新型コロナウイルスの影響に備えるためオンラインによるコンテンツ公開も行われた。
研究テーマ
報告者らは小型慣性センサなどに使用されている微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems: MEMS)技術を用いた省エネルギーなハードウェアコンピューティング技術の開発をしている。近年、ウェアラブルセンサを用いた人間行動認知が注目されており、ウェアラブルデバイスではリソースに制約があることから省電力・高性能なAI技術が必要とされている。そこで、リザバーコンピューティング(Reservoir Computing: RC)という計算負荷の低い機械学習アルゴリズムの一部を物理ダイナミクスで置き換えた物理リザバーコンピューティング(Physical Reservoir computing: PRC)を構築し、データの分類・予測などの高度な情報処理を低電力に行うことを目指している。
本研究では物理ダイナミクスとして、MEMS共振器を用いセンサ構造を一体化することでセンサの小型化・知能化を図った。リザバーとして用いる共振器とセンサを一体化した研究は過去にあるものの、一体化が性能に与える影響について詳細に調査したものはない。そこで異なる加速度感度での性能を評価し、感度調整により性能の向上が可能であることを示した。
討論内容
本ポスター発表では、以前から提案していた知能化共振加速度センサにおいて、リザバー共振器と加速度センサの一体化の影響について着目して発表を行った。
発表時には10名ほどの聴講者が訪れ、うち5名ほどと質問を交えた議論を交わした。以前から本研究の関連テーマに興味を持って訪れた人が多く、リザバーの学習システムや評価指標の詳細まで踏み込んだ議論をすることができた。会場閉設直前までポスターを見ていただくことができた。
Eurosensorsとの共同開催ということもあり、普段触れない分野の最新の研究動向をしることができた。また、ムーアの法則の次の技術としての微細化・集積化技術も多くみられ、自身の研究内容と関連するため、国際学会で得た知識を今後の研究生活に活かしたい。
9月19日のポスター発表では、長時間英語で会話することで自身の英語力の向上を感じることができた。
9月20日には夕方からルーヴェンに本部を置く半導体ナノテクノロジーの国際的研究機関imecのクリーンルーム訪問ツアーに参加した。そこでは大学のクリーンルームでは決して見られない、最新の装置が数多く設置されており、仕事の様子を生で見ることができる貴重な機会であった。
9月21日の晩餐会はベルギー王立美術館で催され、様々な古典・近代美術絵画を通してキリスト教の世界観を感じることができた。