International Workshop on Nitride Semiconductors (IWN)は、窒化物半導体に関する研究成果が報告される国際会議です。IWNは2000年に名古屋で初めて開催され、今回で11回目を迎えます。日欧米にて隔年で開催され、窒化物半導体の「結晶成長」、「基礎物性評価」、「光デバイス応用」、「電子デバイス応用」、「新奇材料およびナノ構造」について発表と議論が行われます。
今回は、コロナ禍による2年間の延期を経て、ドイツのベルリンで2022年10月9日から14日の6日間の日程で開催されました。会場はベルリンのランドマークである「ブランデンブルク門」、「戦勝記念塔」や「連邦議会議事堂」などに程近く、ドイツ史を感じる立地にありました。4年ぶりに対面実施された窒化物半導体の国際会議ということもあり、盛んな発表と白熱した議論だけでなく、学生イベントを初め交流の機会も充実していました。
次回のIWNは2024年11月にハワイのオアフ島で開催が予定されています。
「Space Charge Profile and Carrier Transport Properties in Dopant-free GaN-based p-n Junctions Formed by Distributed Polarization Doping」という題目で口頭発表を行いました。
窒化物半導体は、超高速・超高効率な高周波半導体デバイスを実現する材料として注目されています。なかでも、「p型電導性制御」はデバイス作製における最重要技術と位置付けられています。窒化物半導体においてp型電導性は不純物(Mg)のドーピングにより制御されますが、不純物起因の問題のため応用上都合の良い特性を実現しにくいことが知られています。そこで、我々は「分布型分極ドーピング」に着目しています。分布型分極ドーピングは窒化物半導体に固有の「分極効果」を活用するドーピング手法であり、一切の不純物を添加することなくp型電導性を制御することが可能です。本手法は従来の不純物ドーピングとメカニズムが異なるため、不純物に起因する問題を回避するポテンシャルがあります。しかし、「分布型分極ドーピングは不純物ドーピングのようにデバイス応用可能か?」という点については未だよくわかっていません。本研究では、最も基本的なデバイス構造である「p-n接合構造」を分布型分極ドーピングのみで作製し、その応用可能性について調査しました。
IWN2022では、分布型分極ドーピングのみで作製したp-n接合の電気特性について報告しました。特に、デバイス応用上重要となる順方向電流電圧特性や熱抵抗の分析について、他の研究者からコメントをいただき議論を深めることができました。
発表後の質疑応答タイムに限らず、会期中は他研究機関からの参加者とみっちり議論することができました。
コロナ禍のため、今回のIWNが私にとって初めての海外・現地開催の国際会議となりました。実際に異国の地に足を運び、世界中の研究者の前で発表・議論するというのは学ぶものが多く、とても有意義な時間を過ごすことができました。
最後に、ご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団に心より感謝いたします。