International Workshop on Nitride Semiconductors (IWN)は、2年に一度開催され、800-900人程の研究者が参加する、窒化物半導体関連の最大の国際会議です。2020年に開催が予定されていた本会議がCOCID-19の影響により延期されたため、2018年以来の開催となりました。今回は11度目の開催であり、会議内容としては、窒化物半導体の結晶成長・光物性評価・光デバイス応用・電子デバイス応用・ナノ構造など窒化物半導体の研究分野を網羅しています。
本会議は、ドイツ・ベルリンで開催されました。
次回の会議は、2024年にハワイで開催される予定です。
“Improved Q-factors (› 10000) of III-Nitride-Based Two-Dimensional Photonic Crystal Cavities in the Red Region”というタイトルで口頭発表を行いました。
窒化物半導体を用いたLEDなどの発光デバイスは、その発光効率が非常に高く、照明などの光源として広く用いられています。一方で、窒化物半導体を用いた新たな応用先の可能性として、低電流値で発振する高効率なレーザダイオードや、波長変換技術を用いた紫外光源、希土類元素を添加した波長超安定なレーザなどが挙げられます。これらデバイスの実現・高性能化には、数百ナノメートル~数マイクロメートルの微小領域に光を強く閉じ込められる、微小共振器の適用が効果的と考えられています。共振器により光を閉じ込める能力は、共振器Q値により評価されます。Q値が高いほど、光が共振器内に長く閉じ込められ、窒化物半導体と光の相互作用が強まることで、前述のデバイスの性能向上が可能であると指摘されています。
光共振器の中でも、とくに2次元フォトニック共振器は、非常に小さい領域に光を強く閉じ込めうる光共振器として注目を集めています。しかしながら、窒化物半導体の微細加工技術は未だ完全に確立されておらず、設計通りの共振器構造を実現することが難しいため、2次元フォトニック共振の可視光域における実験Q値は、5000程度と低く留まっていました。
本研究での最大の成果は、電磁界シミュレーションによって、微細加工精度が低くても、高い共振器Q値を実現しうる2次元フォトニック共振器を設計したうえで、共振器を実作し10500という高い実験Q値を観測したことです。
発表では、他の研究者から有意義な質問をいただき、本共振器の設計を基とした、新たな応用可能性の提言もしていただきました。
本会議は、窒化物半導体の分野において世界最大規模の国際学会であり、世界各国の研究機関からの研究者の発表を聴講できました。また、休憩時間やポスター発表などにおいて、多くの研究者と活発に交流することができました。さらに、現地の学生が主催する学生イベントにも参加し、海外の学生方と飲食を共にしつつ、最近の研究や研究生活の様子について語り合うことができました。これらの経験は、対面形式で開催される会議ならではのものと思います。
最後に、ご支援賜りました一般財団法人 丸文財団に心より感謝いたします。