The 2022 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing(UbiComp)は、ヒューマンコンピュータインタラクション分野の中でもユビキタスコンピューティング領域に関する研究発表が行われる国際会議です。会期には併設のワークショップが多く、ウェアラブルコンピューティング、Mixed Reality、ヘルステックといった様々な分野の研究発表がありました。UbiCompでの口頭発表は、査読付き論文誌ACM Journals Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies(IMWUT)に採録された中から、著者らの意思で発表を行うかどうかを決めることができます。
今年度は、3年ぶりの現地開催が行われ、アメリカのアトランタとイギリスのケンブリッジでの現地開催およびリモート開催のハイブリッド開催になりました。私はアトランタ会場のジョージア工科大学での現地参加を行いました。
【研究テーマ】
Dwell Selection with ML-based Intent Prediction using only Gaze Data
書誌情報: Toshiya Isomoto, Shota Yamanaka, Buntarou Shizuki. Dwell Selection with ML-based Intent Prediction Using Only Gaze Data. Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies (IMWUT), Vol.6, No.3, Article 120, September 2022
視線入力は、将来の情報端末の操作手法として、手を使用せずに操作が可能な点から、SDGsやSociety5.0に代表されるインクルーシブな世界の実現に向けて、非常に期待度の高い操作手法の1つです。この視線入力の固有かつ最大の問題としてミダスタッチ(意図しない操作の発生)があります。本研究ではこのミダスタッチの解決を、「ユーザがなぜ目を動かしたか」というユーザの意図を、瞳孔径や目の動き方などの視線情報から推定することにより試みます。当研究の独創点としては、これまでの研究で行われてこなかった、より現実的な環境での実験を通じた視線情報の収集および、これらの視線情報に含まれているユーザの意図を機械学習により推定する点にあります。結果として、これまでの研究における推定精度が70%程度であったものに対して、当研究では90%の推定精度を得ることができました。
【討論内容】
現地9月12日に上記の内容の口頭発表を行いました。現地会場には30名近くが聴講しており、質疑では3名の聴講者から、使用している機械学習の方法に関する質問、今後の発展に関する質問がありました。発表後も質疑をしてくださった研究者との議論を行うこともできました。これらの質問をもとにさらなる論文執筆を進めることができており、非常に有意義な発表だったと考えています。
博士後期課程に進学し3年目で初めての国際会議であった。現地開催になったとはいえ、依然として参加者数(運営の発表ではアトランタ約60名、ケンブリッジ約40名)は以前の1/5程度であり、コロナウイルス感染症拡大前と比べると寂しさのある学会参加でした。しかし、対面での発表を終えた後に複数の研究者と議論を行うという点においては、オンライン参加よりシームレスで、やはりこれ(発表に対するより深い議論)は現地参加であるからこそ体験できるものだと感じました。
また会場であったジョージア工科大学は、現在発展が著しい仮想現実(VR)を体験するプロトタイプシステム(現在はヘッドマウンテッドディスプレイを頭に装着するが、これはアームが動くデバイスにあわせて自らが動くシステム)の展示もあり、当該分野の歴史を学びつつ様々な機器を体験することができた。