27th Microoptics Conference (MOC2022)は、微小光学に関する成果が報告される国際学会の1つです。対象となるテーマとしては、設計、製造、測定、および通信、照明、量子システムの分野を含む微小光学技術によるアプリケーションなどが挙げられます。
今年はドイツのイエナで2022年9月25~28日の計4日間開催され、発表件数は口頭発表54件、ポスター発表30件でした。そのうちプレナリー講演3件、招待講演10件、産業講演5件、一般講演66件が行われました。また学会には、世界各国の研究者が参加し、活発な議論が交わされていました。COVID-19の影響もあり、会議は対面とオンラインのハイブリッド方式で行われました。現地参加者は約80名、オンライン参加者は40名程度であり、内訳は日本から3割、欧州4割、その他3割でした。
次回の本会議MOC2023は日本の宮崎で9月24~27日に開催予定です。
【研究テーマ】
Aggregation of BPSK Signals Using Coherent Interference for Modulation Format Conversion to 8QAM Signal
変調フォーマット変換は、ネットワークの柔軟性、チューナビリティ、スペクトル効率を高めるための重要な技術です。8相直交振幅変調(8QAM)は、容量とノイズ耐性のバランスの良さから、メトロ・コアネットワークでの通信に期待されています。これまで、高非線形ファイバ中の四光波混合により2位相偏移変調(BPSK)から8QAMに変換する方法が1件のみ報告されています。
本論文では、遅延干渉計を用いたコヒーレント干渉に基づくBPSKから8QAMへの新しい変調フォーマット変換方法を提案します。提案手法の変換性能を、光信号対雑音比やコンスタレーション図、BPSKと8QAMの伝搬長の関数としてのビット誤り率により数値的に評価した結果、BPSKから8QAMへのエラーフリーなフォーマット変換が行えることを確認しました。
【討論内容】
報告者はポスター発表を9月27日に現地で行いました。
報告者の発表には5人の聴講者が訪れ、有益なコメントと質問をいただきました。質問とその回答は次のようになります。
1つ目の質問は、フォトディテクターで発生する非線形効果による影響は今回の実験結果に含まれているのかというもので、フォトダイオードで発生する非線形効果による影響も考慮して実験結果を出していると回答しました。
2つ目は、今回の研究では8QAMを対象としているが上位フォーマットの16QAMの方がより伝送容量も大きくていいのではないかという質問をいただきました。その質問に関しては、伝送容量に関しては8QAMよりも16QAMの方が有意であるが伝送距離を考慮した場合、伝送容量・伝送距離のバランスが良い8QAMの方がいいので本研究の対象にしましたと回答しました。
3つ目は、今回報告した研究の実験的検証をするにあたって、何か課題はあるのかとういう質問でした。変換回路にある入れ子型の遅延干渉計は市販品が調達できないことが課題と回答しました。この入れ子型の遅延干渉計を自作するか外注するかによって、実験的検証も行えると説明しました。
4つ目は、現行のネットワークで8QAMは使われているのかという質問でした。標準化はされているが日本のネットワークではまだ使われていないのが現状ですと回答しました。
5つ目は、BPSKと8QAMなどの変調フォーマットがどういったものであるのかという質問でした。変調フォーマットとは光信号に対して、位相と振幅に情報を持たせる技術であり、BPSKは位相に情報を持たせた変調フォーマットで、8QAMは位相と振幅の両方に情報を持たせた変調フォーマットであると回答しました。
6つ目は、先行研究と比較した時、今回報告した研究の優位性について聞かれました。先行研究では四光波混合を用いてBPSKから8QAMへのフォーマット変換を達成しています。先行研究の問題点として、空きの周波数スロットが必要であることと位相同期機構が必要であることが挙げられ、本研究ではこれらを必要とせず構造が比較的簡単であることが利点だと回答しました。
また今回提案した手法が全て光信号で処理ができている点が良いとのコメントもいただきました。
今回の学会は現地にポスター発表で参加したが、他の研究者と英語で長時間議論することができ、非常に有意義な時間を過ごせました。しかし、質問がうまく聞き取れないことや、的確な回答ができないこと、他の発表者の内容が分からないことが多々あり、今後の研究や学会に参加するにあたって英語力の必要性を感じました。微小光学を取り扱う本会議において、通信に関する発表を行ったため聴講者の中には通信に精通していない人もいて、基礎的な質問もされました。このことから他分野の人にも自身の研究を分かりやすく説明できる能力も求められると感じました。
また日常生活におけるやりとりも全て英語で済ませないといけないのでとても苦労しました。具体的には、ホテルのチェックアウトを一人で済ませる機会があったのですが、相手の言っていることを理解できず何度も聞き返し、レスポンスよく返答できませんでした。相手が分かりやすい英語でゆっくりと話してくれたため無事に手続きをすることができました。このように日常生活でも英語を使ってコミュニケーションを取らないといけないことは、海外で生活しないとできないことだと感じました。本学会の参加にあたって非常に有意義な時間を過ごせたと思っています。
最後に、このような貴重な経験をするにあたり、多大なるご支援をしていただいた貴財団に心より感謝申し上げます。