国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和4年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
廣政 宗一郎
(同志社大学 大学院理工学研究科 機械工学専攻)
会議名
Fluids Engineering Division Summer Meeting 2022 (FEDSM 2022)
期日
2022年8月3日~5日
開催地
InterContinental Toronto Centre, Toronto, Canada

1. 国際会議の概要

本会議FEDSM 2022(ASME Fluids Engineering Division Summer Meeting 2022,米国機械学会 流体工学部門講演会)は米国機械学会の流体工学部門が毎年開催する夏季ミーティングである。米国機械学会は135ヶ国にわたり85,000人以上のメンバーで結成されている団体であり、本会議は世界最大規模の流体分野の国際学会である。流体の基礎分野から応用分野まで網羅しつつ、世界各国の研究者が最先端の技術成果を共有する学会である。

本会議はトロント、カナダで開催され、2年ぶりの対面会議となり16ヶ国から200名近くの発表者が参加し、200件以上の発表が行われた。会議は7つの部門に分かれ、40個のセッションが分野別に各発表が行われた。発表に至るまで、2つの査読が必要であり、最後にフルペーパーとオンライン視聴を可能とするための発表動画の録画が必要とされた。また、来年度の発表は米国機械学会、日本機械学会、韓国機械学会の3学会協力会議(流体工学国際会議、AJK2023)が企画されており、大阪国際会議場での開催が予定されている。


図1. 国際会議開催場所
(InterContinental Toronto Centre)

図2. トロント市内の中心部

2. 研究テーマと討論内容

衝突噴流とは噴流を壁面に衝突させる機構であり、高い熱伝達が得られる現象であるため、加熱面の冷却に用いられることが多い。従来、大型工業機械の冷却に用いられているが、近年はパワーエレクトロニクスや小型電子機器に必要な冷却技術としても注目されており、冷却性能の促進が必要とされている。衝突噴流の冷却において、流体に含まれる渦が冷却性能を大きく影響し、渦を生成することで冷却促進が期待される。そのため、本研究では渦を生成する機構に注目し、その上で全体の流れ場を解明することで衝突噴流の冷却促進を目標としている。

一方、本研究室ではこれまで衝突壁がない条件において、渦が周期的に放出される機構に視点を置き、研究を重ねてきた。そのため、本テーマではこの周期的渦放出機構を用いて、衝突壁を有する条件下で実験を行い、壁面の有無によって生じる流れ場の差異を探求している。その結果、衝突壁は衝突距離の50%の位置から流れ場の影響を及ぼすことが分かり、衝突壁を有する条件でも渦放出現象を確認することができた。また、放出された渦は衝突壁までは辿り着かないが、流れに不安定性を及ぼすことも明らかとなった。

これらの見解を発表したところ、流れに発生する乱れについての質問をいただき、従来の衝突噴流では現れない乱れの異方性についての議論を行った。この点については本研究でこれまで検討していなかったため、今後の研究で追う必要があり、研究の進展に繋がった。


図3. 口頭発表の様子

図4. 本研究室からの参加者

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

対面で行われた本会議は、これまで経験したオンライン学会とは違い、より活発な議論を交わすことができた。質疑応答では自分の英語力に対する自信を新たにするとともに、研究内容に対するフィードバックを流体分野の専門家から得ることができ、議論を通して新たな展望を発見することができた。自身の発表以外でも、他の研究者の発表から、本研究テーマを進めるために用いられる解析手法や見解を身に付けることができ、有意義な学会となった。

また、学会終わりのレセプションでは同じセッションの発表者の方々と研究に対する意見交換や研究室の話をはじめ、お互いの国の文化の違い、そして共通点であった部活の話題に拡がり、レセプション室の閉室時間まで語り合い、懇親を深めることができた。彼らとは今でも連絡を頻繁に取り合い、来年日本で行われる学会でも再会できることを願っている。この経験は対面会議であったからこそ行えたことであり、今後もこの繋がりを大切にしたい。


図5. マニトバ大学(カナダ)の研究者との写真

この度対面で国際学会に参加することは初めてであったため、オンライン学会とは異なる事態も多く経験した。コロナ禍であったため入国と出国に必要な準備や緊急事態に対応するための準備が多く、リスクヘッジを取る必要性を実感した。これに加えて国際学会の発表の準備も多く、苦労した場面も多かった。しかし、オンライン学会と比べ、対面国際学会では直接海外の研究者と交流をすることができ、それに対して楽しさや達成感も感じ、心の底から参加して良かったと思う。個人としても将来国際的に働く夢を持っており、この経験はその夢に向かうための大きな一歩と感じた。

最後になりますが、大変貴重な経験を提供していただきました、一般財団法人丸文財団に心より感謝を申し上げます。

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