SPIE Photonics Westは、年一回、米国サンフランシスコで開催される国際会議である。光に関する研究や製品を発表するために、世界中から研究者や企業が集い、情報交換や議論を行う。例年の参加人数は数万人におよぶ、当該分野で世界最大規模の学会である。
例年5,000件以上の研究成果の発表と、1,000以上の企業による製品の展示が行われるが、今年はコロナ禍の影響で参加人数は例年を大きく下回った。主催のSPIEによると、参加登録者は会議1週間前の時点で1万人程度であった。実際の参加者数は今のところ公開されていない。発表件数はおよそ2,000件であった。
発表の様子
可視光2光子吸収による、光スイッチンング蛍光タンパク質の発光・非発光性のスイッチング法の開発と、共焦点蛍光顕微鏡への応用による空間分解能の向上について報告した。今回提案する光スイッチング法は、現象そのものが新しいことに加えて、励起光強度に対して3次の非線形性を有する蛍光発光を、560 nmと比較的短い波長で誘起できるため、共焦点顕微鏡への応用において高空間分解能での観察が可能となる。本発表では、数種類の光スイッチング蛍光タンパク質の、可視光2光子吸収による光スイッチングの特性評価及び、本スイッチング法を利用した共焦点顕微鏡の開発と、ヒト癌細胞試料の超解像イメージングへの応用について報告した。質疑応答では、試料への光ダメージや熱発生、共焦点検出のピンホールを取り除いた場合に予想される観察像の変化ついて議論を行った。また、当初共著者が発表を予定していた投稿について、発表予定者が不参加となったため、代わりに発表を行った。テーマは、ラマン顕微鏡による生体切片試料のガン・非ガン診断の、強化学習による高速化であった。発表では、甲状腺細胞試料のラマン画像を用いた高速診断のシミュレーションと、がん切片を模したビーズ混合試料のリアルタイム診断における高速化について報告した。質疑応答では、さらに高速な診断を実現するために実装可能な技術について議論を行った。
コロナ禍の影響で国際的な交流の場が限られる中、関連分野の大規模な国際会議に参加する機会が得られ、貴重な体験ができた。2件の口頭発表を行い、研究成果をアピールできた。様々な研究発表や企業展示を見てまわり、分野の最先端の情報を収集できた。久々の対面での国際学会の参加であったが、対面での会議の長所を、発表の質疑応答の時間以外に行う議論に感じた。雑多な話をきっかけに、興味深い議論に繋がることがあった。また、時間の制限がないので、要点だけでなくプラクティカルな細かい点まで議論できた。以前より交流のある海外の研究者とも、数年ぶりに会うことができ、より交流を深められた。今後の共同研究について、議論をすることができた。
最後に、今回の国際会議への参加にあたり、多大なご支援を賜りました貴財団に、心より感謝申し上げます。