The International Symposium on Information Theory and Its Applications (ISITA) は隔年で開催される情報理論分野の国際会議である。ISITA2020は、個人(特に学生)が研究の楽しさを知り、情報理論とその応用における新しい結果を世界と共有する場であり、研究発表分野は多岐にわたる。具体的には、Shannon Theory・Coding Theory・Cryptography・Communications and Signal Processing・Learning and Formalizationなどの多彩な範囲が網羅されている。
本国際会議は、情報科学分野としては長い歴史を有し、今年2020年には、初回のシンポジウムから30周年を迎える。今回は、初回の開催地であるハワイでの開催が予定されていた。しかし、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。
発表当日の様子
今回、"Quantum illumination using quasi-Bell state" というタイトルで発表を行った。我々は、擬似ベル状態と呼ばれるエンタングルド状態について研究してきた。エンタングルド状態は、エンタングルメント(非局所的な相関)を持つ光の量子状態である。このエンタングルド状態の中で擬似ベル状態は、コヒーレント状態などの非直交状態で構成されているにもかかわらず、最大エンタングルメントになるものがある。また、減衰に強い可能性があるとの期待から近年盛んに研究されている。
そこで、まだ解明されていない擬似ベル状態の特性を、明らかにすることを目的に、擬似ベル状態を用いた量子イルミネーションの誤り率特性について研究を行った。量子イルミネーションは、目標の有無を検出する量子プロトコルである。本研究は通信路として、最も基本的な減衰通信路を扱い、基本的なエンタングルド状態であるベル状態・2モードスクィズド状態、送信機・受信機で最大エンタングルド状態になる擬似ベル状態の誤り率の比較を行った。その結果、減衰が小さい場合には、受信機おいて最大エンタングルド状態、減衰が大きい場合には、送信機において最大エンタングルド状態となる擬似ベル状態を用いることが最も低い誤り率を得る量子状態であることを示した。
今回の国際会議が、初めて英語での研究発表でした。発表方式がオンデマンド方式で、約15分と約3分の2つの動画によるもので、入念に準備することができたので英語で上手く伝えることができたと思う。また、本国際会議ではGatherによる参加者の交流の場が用意されており、参加者の方々とお話する機会を得ることができた。しかし、リアルタイムでの質疑応答を含むコミュニケーションの難しさを痛感した。また、他の参加者から、話し方やスライド構成などのさまざまなことを学び、実際にハワイに行くことができませんでしたが、とても有意義な時間を過ごすことができた。
本国際会議に参加するにあたり、多大なご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。