オンライン会議のプラットフォーム
ECS PRiME は日本、韓国、アメリカの合同開催による電気化学会の中でも最大規模を誇る国際会議である。電気化学およびエネルギー化学分野において、例年、発表の質が極めて高く、国際的な影響力も絶大である。口頭発表を行うセッションはMolten Salts and Ionic Liquids にて登録しており、本セッションではイオン液体、溶融塩の基礎・応用に関するレベルの高い研究が集結している。全体の参加者は約3,000~4,000人におよび、世界中での電気化学のトレンドを追跡する最良の機会である。
本来であればハワイにおいて開催される予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、今回初のオンライン開催へと至った。口頭発表、ポスター発表共に、規定時間は異なるが、スライドを投影しながらspeakingしたものをアップロードし、随時質問にチャット形式で応対するという形式を取った。発表した資料が残るという特徴から、期間が設けられているものの、興味のあるテーマについて好きな時間に発表を聞くことができるのは、オンライン開催によって得られた絶大なメリットといえる。
自動車排ガス触媒では白金族元素の中でも高付加価値の白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)は三元触媒として利用されている。我が国の持続的発展において、廃棄物から希少価値の高い白金族元素や希土類元素を効率回収する技術開発は必要不可欠な要素である。
そこで、酸溶解させた白金を回収するという目的の達成のため、溶媒抽出法と電解析出法の連動による白金の回収を試みた。
Pt(IV)はAlamine336/[P2225][NTf2]抽出系では、以下のようにアミン塩酸塩と1:2錯体を形成し、アニオン抽出機構により以下の抽出平衡式で進行することが示唆された。
[PtCl62-]aq + 2[R3N・HCl]org ⇔ [R3NH]2[PtCl6]org + 2[Cl-]aq
1.0 M Alamine336/[P2225][NTf2]のCV/EQCM解析からAlamine336は電気化学的分解を伴わないことが示唆された。その上で、抽出錯体について、CV/EQCM解析を行ったところ、Pt(IV)抽出錯体の還元挙動は二段階で進行し、-1.65 V vs.Fc/Fc+でPt(II)+2e-→Pt(0)の還元反応により析出することが示唆された。Mapp=197.5は、Pt(II)/Pt(0)に伴う金属析出であることが判明した。また、Δηρの減少は電極界面近傍での局所的なイオン液体の粘性低下を表しており、電解析出過程によるPt(II)の消費に対応することが示唆された。さらに、連続抽出-電解試験(10 cycles)により、Pt(IV)抽出率:E>90%であり抽出剤の再利用が可能であることが示唆された。イオン液体相の直接電析によるPt回収率は約80%であった。また、析出した白金の純度は概ね>95%程度であり、さらなる高純度化技術の開発が今後の課題である。
国際会議への参加は今回が2回目であった。前回は博士前期課程1年次に、日本で開かれた国際会議に参加した。しかしながら、自分の作成した原稿の表現に課題が残ったが、今回の発表においては原稿作成も入念に行い、その課題を比較的クリアできたと感じている。また、先述したように、本国際会議はコロナウイルスの影響により、オンラインでの開催となったため、「好きな時間に・何度でも」発表を視聴できることができた。このことは、専門的な英語を聞くことと、諸外国の独特な英語の発音を聞き取る練習と、最新の研究動向をすべて同時にリサーチできる最良の機会となった。
興味深い講演は、慶應義塾大学の片山靖教授らのグループの発表で、磁場下でコバルトの電解析出を行うという研究であった。この発表で第2著者に入られている芹澤信幸助教授は、申請者が用いた「EQCM法」に精通した人物であり、申請者の発表においても多くの参考になった。
また、申請者が重要な知見と感じているのは、英語を母語としない研究者の多くは独特な発音をしているという点である。“Japanese English” は解決すべき課題と感じていたが、「わかりやすい・伝わりやすい」英語の運用こそ、最も重要であるということを学んだ。