国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和2年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
笹間 裕太
(茨城大学 理工学研究科 電気電子システム工学専攻)
会議名
The 46th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society (IECON 2020)
期日
2020年10月18日~21日
開催地
[オンライン開催] (シンガポール・Marina Bay Sands Expo and Convention Centre)

1. 国際会議の概要

IECON 2020は、IEEE Industrial Electronics Society (IES) が主催する第46回年次会議であり、2020年10月18日から10月21日に開催された。エレクトロニクス、制御、通信、計算知能などの産業応用分野に関する研究が主とされ、1,194件の論文が投稿された。そのうち850件が採択され、採択率は71.2%であった。

本会議はシンガポールのMarina Bay Sands Expo and Convention Centreで行われる予定であったが、新型コロナウイルスによる昨今の社会情勢を鑑みて、オンラインでの開催となった。円滑な進行のため本会議では、発表者が事前に動画投稿を行い、会議中に主催者側が上映するいう方式が採用された。会議当日にはそれぞれの発表者に3分程度の質疑応答の時間が与えられ、活発な意見交換が行われた。

来年のIECON 2021はカナダのトロントで開催される予定である。また、2023年には改めてシンガポールで開催される。

2. 研究テーマと討論内容

私は最終日の "Dual Active Bridge" というセッションで "Dual Active Bridge Converter with AC Heating Capability for Lithium-ion Batteries in Electric Vehicles" というタイトルで発表を行った。

発表当日の様子

我々は、電気自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリを加熱するためのヒータに関する研究を行っている。
近年、環境問題への意識の高まりから温室効果ガスを排出しない電気自動車が注目を集めている。電気自動車は電力源として、高エネルギー密度、長寿命といった利点を持つリチウムイオンバッテリを用いる。しかし、低温環境下ではリチウムイオンバッテリの放電容量が低下し、航続距離の大幅な減少が課題となる。そのためバッテリの適切な加熱が求められており、これまでに様々な加熱手法が提案されてきた。その中で近年、交流加熱と呼ばれる手法が注目を集めている。本手法では交流電流を流すことで内部抵抗より生じるジュール熱を利用し、バッテリを内部から加熱することで、高効率で均一な加熱を可能とする。しかし、交流加熱手法は交流電流を生成するための電力変換器であるインバータを別途必要とすることから、バッテリシステムの複雑化と高コスト化が重大な課題となる。
そこで我々は、交流加熱用インバータを統合した電動車両用充放電器を提案している。提案手法は2つの電力変換回路を1台に統合することで、劇的な簡素化と低コスト化を達成する。本会議では、詳細な動作解析と実機検証の結果について報告した。

私が参加したセッションは無数にある電力変換回路のうちの一つの方式に関するもので、非常に専門的な内容であったが、様々なアプローチで検討が行われており、この方式に対する世界的な注目度の高さを感じた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議で発表を完了させるまでに、以下のような様々な困難があった

  1. 本会議は私にとって初めての国際会議であり、未知なことが多くあった
  2. コロナウイルスの影響で例年と異なる方式で会議が行われたため、会議の詳細が公開されるまで時間がかかった
  3. 学会の1か月以上前に動画投稿を求められたため、発表の準備をする時間が十分になかった
  4. 最終版とは異なる動画が公開されてしまうトラブルがあり、発表当日、自身のPCから画面共有をさせてもらうようお願いする必要があった

しかし、このような困難を乗り越えて発表を無事に完了させることができたことは、大きな自信となった。
今回の経験を活かし、今後も研究活動に邁進していきたい。

最後になりますが、貴財団の御支援を頂戴し貴重な体験ができましたこと、心より感謝申し上げます。

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