Applied Superconductivity Conference (ASC) は、2年に1度開催される超伝導の応用分野、特に電子物性、集積化技術、超伝導材料に関する世界最大規模の国際会議です。本会議は、2020年6月にアメリカ合衆国フロリダ州タンパにて開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、一旦、2021年1月に延期された後、最終的にはオンラインでの開催に変更されました。2020年10月24日から11月7日までの2週間の開催期間の間、オンラインでの口頭発表が行われるとともに、ポスター発表(iPoster session)がなされました。会議参加には事前の査読を通過する必要がありました。今回、我々は、2020年11月6日8:00-9:00(日本時間)、超伝導電子物性のiPoster session において発表が許されました。iPoster session の開催ホームページを下図に示します。右から2番目が我々のポスターです。iPoster は、本会議に特化したシステムで、会話ができるほか、チャットやメッセージを残すシステムが搭載され、議論が活発になるよう工夫されていました。
ポスター掲載の様子
また、本会議での発表者は、米国電気電子学会(IEEE)の特別号に論文を投稿する権利が与えられ、厳正な審査のもと掲載の決定がなされました。
なお、次回は2022年に、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルルでの開催が予定されています。
ポスター発表の様子
Novel Electronics Devices の区分で、“Black Hole Solitons in Josephson Transmission Lines”という題目で、ポスター発表を行いました。本研究では、戸田格子電圧ソリトンを実現した非線形LC 回路に双対な超伝導回路(ジョセフソン伝送線路)において、電流ソリトンの存在を明らかにするとともに、疑似的なブラックホールの創生を提案いたしました。この回路では、1990年代にソリトン的な振舞いをする波動の存在が数値計算に指摘されていましたが、解析解は明らかにされていませんでした。そこで今回、逓減摂動法を用いて、その波動が非収束型変形KdV方程式に従うことを明らかにし、回路中に電流ソリトンが存在することを初めて解析的に明らかにすることに成功しました。さらに、この電流ソリトンによって、擬似的なブラックホール対が創生できることも明らかにしました。この結果は、超伝導デバイスを用いたブラックホールの基礎研究に貢献するだけでなく、そこでの知見を基にした新たな応用研究分野を切り拓くことが期待できます。
オンライン開催であったため、他の参加者との交流が難しく、残念ながら、本研究内容については、討論ができませんでした。
本会議は、超伝導に関する最大規模の会議であるため、超伝導に関する様々な最先端の研究に多く触れることができました。特に、新規超伝導材料の開発からその集積化まで様々な超伝導の応用を知り、基礎的研究がいかに応用研究へと展開されるかに触れることができ、大変興味深く感じました。会議に参加することによって、超伝導に関する新しい知見を得るとともに、今後の研究のための調査を行うことができました。また、会議中には、他のポスター発表を訪問し、英語でコミュニケーションをとることができました。その中で、自分の思っていることを英語でわかりやすく説明することや、相手の思っていることを理解することの難しさを感じました。さらに、今回、初めて本発表の内容を単著論文としてまとめることができました。この経験は、今後研究をしていくうえで大変励みになりました。今後は、本会議で得た知見を基盤に、研究を進めていきたいと思います。また、英語での討論が、よりスムーズにできるように努力したいと思います。
本会議は、1966年から続く伝統的な会議で、参加者も多く、私も以前から参加したいと思っておりました。しかし、当初は現地開催が予定されており、交通費や宿泊費、参加費などの費用が高額なため、参加することを躊躇しておりました。貴財団からのご支援をいただけたおかげで、会議に参加することができ、自分の知見を広げることもできました。さらに、次の研究を行うモチベーションが高まりました。ASC2020 に参加したことは、私にとって、大変貴重な経験となりました。最後に、今回の国際会議に参加するためにご支援いただきました貴財団には、心から感謝申し上げます。