IEEE Conference on Decision and Control(通称CDC)は西暦1962年から毎年開催されている非常に歴史の長い会議であると共に、制御分野最高峰の国際会議である。
CDCのセッションは、制御工学を中心に機械学習や最適化数学、ネットワークと幅広く設けられている。
今年の会議には世界中の研究機関、企業から約2,000人が参加した。また、会議論文の採択率は制御分野では比較的低く、今年は57%であった。
会議は初日にワークショップがあり、その後3日間にわたり口頭発表のセッションが設けられる。会議期間中は、初日にWelcome Reception、中日にBanquet、最終日にFarewell Receptionが開催されるほか、毎日2回のCoffee Breakが設けられている。
次回は、韓国チェジュ島で開催予定である。
図1.学会会場入り口
図2.ニースの景色
“Instant MPC for Linear Systems and Dissipativity-Based Stability Analysis”という題目で口頭発表を行った。
図3.口頭発表の様子
現在の情報制御分野において、情報処理や通信制御の高度化のために重要な技術として、モデル予測制御(MPC)が知られている。MPCは高い制御性能を実現できるという利点があるものの、制御演算処理にかかる計算負荷が大きく高価で高性能な計算プロセッサにしか実装できないことが問題とされてきた。この問題認識のもと、従来からMPCの計算負荷を低減し制御演算を高速化させるため、MPC内部の処理に使われる最適化アルゴリズム自体の改良が広く行われてきた。しかしながら、最適化アルゴリズムの改良による高速化には限界があり、全く新しい発想で高速化を実現する必要がある。
本発表論文では「準」最適な処理に留め多少の制御性能を犠牲にすることで制御演算処理の高速化を目指し大きな成果を得た。このアイデアのもと、ある制御数値実験においては約5%制御性能を劣化させる代わりに100倍以上の計算の高速化が可能となった。そのため、安価なマイコンなど従来と比較し格段に小規模なプロセッサにまでもMPCを実装できることが期待される。また、従来のMPCでは難しかった制御系の安定性を、制御システムのエネルギーに着目して理論的に保証した。
口頭発表における質疑応答では、3人の研究者から質問をいただいた。どの質問も非常に考えさせられるものであり、今後の研究を進めるにあたり大変参考になった。また発表後、質問者以外にも複数コメントをいただき、自分の研究に多く興味を持っていただけたと感じた。
Welcome Receptionでは研究のベンチマーク相手の方を見つけたため、思い切ってこちらから話しかけてみた。私は、相手の研究を参考にしていることや自分の研究内容について話した後、翌日自分の口頭発表があるため是非来てほしいと告げた。すると、翌日の私の口頭発表を見に来てくれた上、コメントをいただくことができた。さらに、後日未発表の論文を送ってくれるとのことであった。
また、Farewell Receptionにおいては3名の外国人PhD学生と交流をし、自国のことや研究のことについて話した。
今回の会議参加は、自分の研究を進める上、国際交流を行う上で非常に有意義なものであった。この場をお借して、御支援いただいた一般財団法人丸文財団様に対し厚く御礼申し上げる。
図4.Coffee Break
図5.Banquet