International Symposium on High Voltage Engineering (ISH) は世界最大規模の高電圧の国際会議であり、1972年に第1回目の会議が行われて以来今年で21回目の開催となる。本会議は、電力システムの信頼性や安全性の向上のために研究者間で知識やアイデアを共有することを目的とした会議である。ISH 2019は、2019年8月26日から30日まで、ハンガリーブダペストのThe Budapest congress & world trade centerで開催された。今年の会議では、38カ国から423人が参加し、328本の論文が発表された。加えて、スポンサー企業の展示ブースも設けられており、電力機器診断メーカーや試験システムメーカーの最新技術が展示されていた。
次のISH 2021は2年後に中国の西安交通大学で行われる。
発表題目:
“ Influences and Behavior of a Water Droplet on Breakdown Properties in the Mineral Oil Observed by a High-Speed Camera and a Coupled Analysis of the Electric Field and Fluid ”
口頭発表の様子
電力システムで主要な機器であり、安全に信頼性の高い運用が求められている電力用変圧器は紙と絶縁油で絶縁された複合絶縁系であり、油中混入の水分が絶縁系に深刻な影響を与えることが知られている。油中水分量が飽和水分量を超えると油中に水滴が発生し、その水滴が機器の絶縁耐力を低下させて破壊に至ると解釈されているが、発生した水滴が不平等電界下でどのように動き、絶縁破壊に寄与するかを観測と数値解析の両面から詳細に検討した例は少ない。
私達は、絶縁破壊電圧に影響する水滴の挙動を、高速ビデオカメラを用いて測定し、水滴の初期位置により破壊現象は異なることを明らかにした。この初期位置による水滴挙動の相違を連成解析と呼ばれる手法で解析し、実験結果を再現できる解析結果を得ることができた。
よって、本解析手法を電力機器の電界設計や管理運用に適用することで、異物の影響を受けにくい機器開発が可能になり、信頼性の高い電力系統運用に貢献することができると考える。
Gala Dinnerの様子
今回が初めての国際会議かつオーラル発表だったため、英語で自分の研究内容のポイントが正確に伝えられるか、質疑で活発な議論を交わすことができるかといった不安があったが、発表してみると聴衆の多くに自分の研究を理解してもらい、4つの質問をもらうことができた。質問の中には内容を理解していないと出てこない質問もあり、最低限自分の研究成果を英語で伝えることができたと感じた。しかし、質問に対する回答は伝えたい情報の半分以下しか伝えることができず、英語力の足りなさを感じた。そのため、今後さらに伝えたい情報を正確に伝えられる英語力を養いたいと思う。
本会議で、発表時以外にも他大学や企業の高電圧分野の研究者と交流することができ、参加できたことを非常に嬉しく思う。
最後に本国際会議への参加・発表および交流活動は、一般財団法人丸文財団からのご支援のおかげであり、この場を借りて心より感謝申し上げます。