14th European Conference on Applied Superconductivity (EUCAS 2019) は、欧州原子核研究機構CERN主催の超電導応用に関する国際学会で、2年に1度ヨーロッパで開催される。
本年は、スコットランド・グラスゴーのScottish Event Campus (SEC) にて9月1日~5日の間に開催された。37か国から1,000人以上の研究者が参加し、その多くはヨーロッパ・日本・中国出身の研究者であった。
超電導のマグネット応用やケーブルに関する発表が主ではあったが、基礎研究から応用研究まで解析・実験と多岐にわたる分野の発表が行われ、発表数は895件と非常に大きな規模の学会となった。
次回は、2021年にロシア・モスクワで開催される予定である。
MRIの高画質化、発電機の小型化などが期待される超電導機器応用において、臨界温度が高いことから冷却コストの低減につながる高温超電導 (HTS) を用いた研究が進められている。HTSであるBi系高温超電導線材が住友電工により線材化、製品化されて以降、応用化への研究が広く進められるようになった。我々は、HTSの中でもより良い機械的特性を持ち、臨界電流密度が高いことから線材のコンパクト化に適した次世代線材と呼ばれるY系高温超電導線材のコイル化に注目し、研究を行っている。HTSコイルは、クエンチと呼ばれる超電導特性の消失により発熱することでコイル全体に熱が伝搬し、ホットスポット温度が上昇してある閾値を超えるとコイルが損傷してしまう。そのため、安定したコイルの運用には、クエンチが生じてもコイルの損傷に至らない運転条件の検討が重要となる。
HTSコイルのクエンチの主な原因は、コイル内に存在する不可逆的な局所的欠陥および局所的な冷却不足による温度上昇であり、低温超電導 (LTS) コイルにおけるトレーニング効果はHTSコイルでは発生しない。したがって、クエンチしたHTSコイルを再利用するためには、コイルをクエンチによる損傷から保護することが重要である。しかし、コイルの性能が要求される性能を満足する以前にコイルがクエンチしてしまう場合、運転温度および運転電流のようなコイルの運用条件を調整することが必要である。
そこで我々は、クエンチが発生してもコイルが損傷しない最大許容欠陥長さMAD (Maximum Allowable Defect) 、およびMADにより発生する抵抗領域、すなわち最小伝搬領域MPZ (Minimum Propagation Zone) について、その温度・電流依存特性をシミュレーション解析により求め、クエンチが生じたコイルを再利用するための条件について検討した。
今回の研究において、Y系高温超電導線材で構成されるコイルの巻線パックを模擬した解析モデルを作成し、有限要素法により温度と電流を変化させた際のクエンチ条件の導出を解析的に行った。
本学会では、初日のWelcome Receptionやランチやコーヒーブレイクやポスター発表など、様々な研究者や学生とコミュニケーションを取ることができる時間が多く、私自身も多くの方々と研究内容や雑談等も含めて交流をし、とても貴重な経験となった。発表時には、昨年度までの学会発表の経験を活かし、質問に納得してもらうべく適切な説明をすることができたと思う。ただ、同時に海外の研究者に対する英語の説明は至らない部分もあり、自身の英語力を向上させなければならないと改めて感じた。また、他の研究者の発表も聴講し、現在の超電導業界の動向を知るだけでなく、私と類似した研究をしている方もおり、今後の研究活動や修士論文の作成に向けて大いに参考になった。
本研究の発表を行うにあたり、海外渡航のご支援をいただいた貴財団に深く感謝申し上げます。