バルセロナの風景(カサミラの前で)
EMN Meetingは2008年から開催されている比較的新しい国際学会であり、これまで北米やヨーロッパ、アジアと世界中で開催されてきた。本学会が対象とするテーマはEnergy、Materials、Nanotechnologyと幅広く(“EMN”の由来)、分野の垣根を越えて最先端の話を聴講できる非常に貴重な学会である。
今回はスペインのバルセロナで開催され、会期中に71件もの口頭発表が行われた。分野は幅広かったが、一人当たり25分という長めの発表時間が与えられていた。そのため各講演者には研究の背景や課題、目的といった序論を十分に説明していただけたので、異分野の現状を知るいい機会となった。欧米の研究者の発表内容は様々であったが、中国では圧電材料の新しいデバイス応用に関する研究が盛んであった。
本学会では、「Displacement Current Measurement Using a Combined Waveform for Organic Devices」というタイトルで口頭発表を行った。
私たちはこれまで有機発光ダイオード(organic light-emitting diode (OLED))や有機電界効果トランジスタ(organic field-effect transistor (OFET))といった有機半導体デバイスに対し、我々独自の電気測定法である変位電流評価法(displacement current measurement (DCM))を適用して、素子内の電荷の挙動を観測してきた。従来のDCMでもデバイスへの電荷の注入や放出過程などの評価が可能であったが、それら過渡状態のインピーダンスを定量的に求めることができなかった。この課題を解決するために新しいDCMを提案し、本学会で発表を行った。
「過渡状態で駆動するデバイスの特性を定量的に評価できる」という本手法の特長をよく理解していただけたようで、発表後にはいくつもの質問をいただいた。特に周波数依存性に関する関心が高かったが、まだ十分に検討しきれていない。今後は周波数特性解析も可能な手法へと発展させていく必要があると強く感じた。
会場の様子(休憩時間)
会場の様子(私の発表前の休憩時間)
今回参加したEMN Barcelona Meeting on Semiconductorには、一般的な国際学会ではあまり見かけない下記2つの特徴があった。
(1) 大きな一つの会場で発表が行われる(二日目のみ2つの会場であった)。
(2) 講演者全員が毎日三食を共にする。
規模の大きな国際学会では専門分野ごとにセッションが分かれており、通常自分のテーマにあった発表を聴講する。このため異分野の研究者の発表を聴講する機会は多くはない。しかしながらEMNでは(1)に示す特徴があり、異分野のテーマの聴講と議論、つまり分野の垣根を超えた交流を促すシステムとなっていた。
さらに(2)のとおり講演者は一緒に食事をする。そのため研究の話題だけではなく、各国の観光地や文化、言語なども話題に上がった。この国際交流も通常の国際学会では得難い経験の一つであった。
研究に関する発表と議論だけではなく、このような貴重な国際交流を経験できたのは、一般財団法人丸文財団のご支援のおかげです。厚く御礼申し上げます。