国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
大野 雪乃
(筑波大学 数理物質科学研究科)
会議名
44th International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves (IRMMW-THz 2019)
期日
2019年9月1日~6日
開催地
Paris, France

1. 国際会議の概要

学会会場の様子

本学会は、ミリ波・テラヘルツ波の基礎研究・応用研究に関する権威のある国際学会の1つであり、開催地としてアジア、ヨーロッパ、アメリカが3年ごとに選出されることとなっており、今回は2019年9月1日から6日までフランスのパリで開催された。本学会の最大の特徴は、トピックがミリ波・テラヘルツ波の光源・検出器に関する研究や、そのアプリケーション(通信、セキュリティ、天文など)と幅広く、かつ多様であることである。今回は約1,000件の招待講演、および口頭/ポスター発表、並びに昨年のノーベル賞受賞者であるGerard Mourou博士をはじめとした、著名な研究者による10件の基調講演が行われた。また、企業展示には約30社が参加し、最新の製品や技術の紹介が行われた。次回はアメリカのバッファローで開催予定である。

2. 研究テーマと討論内容

発表の様子

我々は、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δ固有ジョセフソン接合系をメサ状に加工したテラヘルツ波光源の研究開発を行っている。この超伝導体テラヘルツ波光源は、他のテラヘルツ波光源にとって発振が難しい1-1.5 THzのギャップを埋めるポテンシャルを持っているものの、現状ではその発振出力は伸び悩んでいる。2007年の発明以来、これまで研究されてきた素子ではメサ部が共振器・アンテナの役割を兼ねていたが、本研究では、メサ部からアンテナと共振器の役割を切り離すことに初めて成功した。具体的には、メサのサイズを従来の1/70とし、金薄膜で作製したQ値の高い共振型アンテナを外部に結合した。研究結果は、テラヘルツ波の放射分布や共振周波数がコンピュータシミュレーションで設計可能であることを証明している。この素子構造から得られる発振効率、つまり単位体積当たりの発振出力は、これまでのメサ構造に比べ数倍高いものである。

本学会では上記の内容について、“Terahertz Radiation from the High-Tc Superconductor Intrinsic Josephson Junctions Coupled to an External Resonator”という題目でポスター発表を行った。本発表を通じて、まだ広くは知られていない超伝導テラヘルツ光源の動作原理、他の光源と比較した長所を伝えることができ、また、本研究で提案した超伝導メサに共振型アンテナを結合した構造が持つ特異な性質に関して、有意な議論をすることができたと考える。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

私にとって今回が初めての国際会議への参加だったため、ポスター発表にて伝えたい内容を英語で正確に伝えることができるか不安であった。しかし、発表を聞きに来てくださった方々は、私の英語の拙さに対し非常に寛容で、かつ内容を能動的に理解しようと努めてくださったため、臆することなく相互コミュニケーションを図ることができた。聴講の場においては、他のテラヘルツ波光源に関する最新の動向や技術を学ぶことができ、今後の研究にフィードバックできる知識を獲得できた。また、テラヘルツ波のアプリケーションについて、大学内の研究や座学では得ることができない広範な知見を得ることができた。

本学会への参加は、私の研究をより進展させるとともに、成長させる貴重な経験であった。一般財団丸文財団からのご支援に、この場を借りて深く感謝申し上げます。

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