サンディエゴの街並み
SPIE (the international society for optics and photonics) は1955年に創設された非営利団体で、光学分野では最も有名な学会の一つである。本学会は毎年25個の大きな会議を開催するが、毎年アメリカ・サンディエゴにて開催されているSPIE Optics + Photonicsはその中でも大きい会議の一つである。今回参加したSPIE Nanoscience + EngineeringはSPIE Optics + Photonicsの中で開催される会議の一つである。全体で参加者は4,000人、発表件数は3,000件に上る。
本年度のSPIE Nanoscience + EngineeringのChairはThe Univ. of QueenslandのHalina Rubinsztein-Dunlop博士とGeballe Lab. for Advanced MaterialsのMark L. Brongersma博士であった。全部で13のセッションがあり、光ピンセットやメタマテリアル、量子コンピュータ関係などの分野において活発な発表・討論が行われた。特に、光ピンセット分野においては、2018年のArthur Ashkin博士のノーベル賞受賞を受け、特別討論会や2件の関連するPlenary講演が行われた。
次回のSPIE Nanoscience + Engineeringは同じくアメリカ・サンディエゴにて2020年に開催される予定である。
本会議では、“Thermoplasmonics for investigation of microbubble dynamics in degassed water”という題目で発表を行った。
発表の様子
近年、一細胞分析やDNAの塩基配列決定や合成など、マイクロ・ナノメートルスケールの物質を液体中で操作する技術を必要とする研究が注目を集めている。しかしマイクロメートルスケールの流路の中では粘性が支配的となるため、流体やその中に分散している物質を操作するのは容易ではない。
最近我々は金ナノ粒子の光熱変換特性を用いて、水中でのバブル生成およびその周辺に発生する対流の制御や増強に成功した。金ナノ粒子薄膜に光を集光すると、その光のスポットは非常に薄い(~10 nm)熱源として利用できる。この熱源を用いて脱気水を加熱すると、1 m/sオーダーの速さの流れを伴う水蒸気バブル(直径10 µm程度)を生成することができる。
発表では、水蒸気バブルの成長抑制メカニズムとその振動について紹介した。また、このバブル周辺に強い流れが発生するメカニズムなどを最新の結果を交えて発表した。討論においては、これらの現象と光による局所熱発生極限との関連について有意義な意見交換を交わした。
本会議では、招待講演として研究発表をさせていただいた。そのため、同じセッションのオーガナイザーや招待講演の研究者の方々とより活発にコミュニケーションを取れたように思う。
また発表後、数日にわたって国内外の研究者の方から意見交換を求められた。自身の研究の発展的内容についてご意見をいただいたほか、他研究グループが現在抱えている問題についてアドバイスを求められる場面もあった。ただの競争ではなく、世界をあげてこの研究領域を推進していこうという気概に触れられたという点で有意義であった。
さらに、会期中にはアメリカ・台湾・メキシコなど様々な国の若手研究者と共にコーヒーや食事をとりながら交流をすることができた。そして、様々な国における研究者の生活の様子や将来展望について語り合った。その中で、日本が見習うべき習慣や、日本人の良い習慣などに思いを馳せた。今後この経験を生かして、自身の研究活動を成熟させていきたい。
本国際会議への参加・発表および国際交流活動は、一般財団法人丸文財団からのご支援のおかげであり、この場を借りて心より感謝申し上げます。