「SPECTRA」の様子
APMC (Asia-Pacific Microwave Conference) はマイクロ波関連の最新技術を報告する国際学会である。開催国はアジア太平洋内の国々から選出され、今年はシンガポールで行われた。来年は11月に香港で開催される予定である。今年の採択率は69%であり、合計で800件以上の研究報告がなされた。報告内容は学会名にも含まれているマイクロ波関連に限らず、第5世代移動通信システム(5G)やセンシングなど、無線通信関連の様々なセッションが用意されていた。
会場となったのはシンガポールの象徴とも言えるマリーナベイサンズ内のSands Expo & Convention Centreである。マリーナベイサンズでは毎晩「SPECTRA」と呼ばれる、水とレーザ光による壮大なパフォーマンスが行われており、観光産業への力の入れ具合が感じられた。
本会議では“Photonic Controlling THz-Wave Beam Steering with Sub-milliseconds Repetition Period”と題して口頭発表を行った。
発表の様子
テラヘルツ波は現在の移動体通信で用いられている電波よりも周波数が100倍以上高く、更なる高速無線通信実現の鍵として注目を集めている。一方、テラヘルツ波は大気中での減衰が大きく、遠くまで飛ばすことが困難であるため、我々は複数テラヘルツ波を干渉させることで狭線幅かつ高利得なビームを形成するビームフォーミングによって通信距離を確保している。しかし、ビーム化することにより通信可能な範囲は狭まってしまうため、ビームを振ることで通信範囲を拡大する技術が必要となる。これがビームステアリング技術であり、今回光通信技術を利用することで1msを切るテラヘルツ波ビームステアリングを実現した。
自分の研究を多くの人々に知ってもらうとともに多数の意見や質問をいただき、大変有意義な時間を過ごすことができた。
本学会は私にとって初となる海外での学会発表であり、非常に刺激的なものとなった。発表が終わった後のランチの時間にも積極的に質問を受けるなど、海外らしい雰囲気を体感できた。また、発表外でも参加者から気軽に話しかけられ、英語でのコミュニケーションをとる良い機会となった。自分のリスニング力の乏しさを実感し、今後磨いていきたいと感じた。
研究面で言えば、各国の大学や企業による最先端のアンテナ設計や5G関連の研究を知ることができ、技術者として有用な知見を得た。学生としての発表は私にとって今回が最後であり、大学生活の中で行った学会発表の経験をこれからの社会人生活の中でも活かしていきたい。
最後に今回の貴重な経験をするにあたり、指導いただいた教授、およびご支援いただいた一般財団法人丸文財団様に心より感謝申し上げます。
MBS屋上からの夜景
アートサイエンスミュージアムの滝