サンディエゴの街並み(会場から)
SPIE (The International Society for Optical Engineering) OPTICS + PHOTONICSは、光学およびフォトニクスの分野において世界最大規模の学会であり、毎年アメリカ・サンディエゴにて開催されている。今回のSPIE OPTICS + PHOTONICSは8月11日から15日の5日間にて開催され、世界各国から4,000人以上の研究者が参加し、68のカンファレンストピックスにおいて3,000件以上の講演や発表が行われた。研究分野は、メタマテリアルやプラズモニクス、スピントロニクスなどナノテクノロジーに関する発表から、OLEDやOFET、バイオエレクトロニクスなど有機ベースの材料とデバイスに関する発表、X線やガンマ線、画像・信号処理など光学設計に関する発表など、多岐にわたるものであった。また、企業展示には約180社が参加し、最先端の光学技術についての意見交換が盛んに行われていた。日本からは浜松ホトニクス、オプトロニクスが出展していた。
次回のSPIE OPTICS + PHOTONICSは2020年8月23日から27日に、同じくアメリカ・サンディエゴにて開催予定である。
本学会では、Active Photonic Platformsのセッションにて「Dynamic tunability and polarization anisotropy of elastic plasmonic device」 という題目にてポスター発表を行った。
ポスター発表時の様子
発表内容は、伸縮性フィルム(PDMS)を用いて金ナノ粒子集積膜の粒子間距離を制御し、フィルム伸長に伴う動的な表面プラズモン共鳴波長シフトの実証および、入射偏光に対する共鳴波長シフト依存性についての研究成果をまとめたものである。光学に関する学会であったため質問の多くは、金ナノ粒子集積構造における表面プラズモン共鳴の励起状態についてや、フィルム伸縮に伴うナノ粒子間距離変化について、入射偏光依存性が生じる理由など、金属ナノ粒子のプラズモニクスに関するものであった。また、金ナノ粒子以外の金属ナノ結晶の適用について、フィルム伸長による動的な共鳴波長シフトの応答速度や最大シフト量について、動的な共鳴波長シフトのアプリケーションについてなど、今後の展望に関する質問やアドバイスも多くいただき、研究を発展させる足がかりとなった。その中でも特にカラーフィルタやSERSへの応用に関する意見を多くいただき、その研究分野の重要性や注目度の高さを実感した。
光学分野において世界最大規模の国際学会に参加し発表を行えたことは、非常に有意義であり貴重な経験となった。発表を通して多くの研究者の方と意見を交わすことにより、自身の研究の世界的な位置づけおよびその重要性を知ることができ、今後の研究活動へのモチベーションになった。また、英語で研究紹介し議論を行えたことは、大きな自信となった。専門分野の近い研究者と、研究内容の細部まで深く議論することも多く、こちらの意図を正確に伝えることに苦慮する場面もあった。より詳しく議論をするためには英語力を更に向上させる必要があると実感した。
また、世界的に活躍している研究者の発表を聴講することにより、プラズモニクスやメタマテリアルなど光学に関する幅広い知識を得ることができた。さらに、スライドでの図やグラフの示し方、発表における話し方、アピールの仕方など、国や研究分野によって様々であり、とても勉強になった。今後の自分の発表に活かしたいと思う。その中でも特に、伸縮性フィルム(PDMS)の機械的な伸縮制御により、焦点距離が連続的に調整される反射型のメタレンズについての口頭発表は、フィルムの機械的な伸縮制御により光を動的にコントロールするという観点において自分の研究に類似しており、とても刺激となった。次回は口頭発表を行えるよう、今後もより一層研究に励みたいと思う。
最後に、このような貴重な経験を積むことができたことは、丸文財団様による国際交流助成金のおかげであると感謝いたしております。海外での研究発表の機会を与えてくださったことに、心より御礼申し上げます。