図1 世界遺産 兵馬俑
29th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-29) は毎年開催される太陽電池に関する最大規模の国際会議である。この会議では太陽電池材料の基礎物性から、セル作成、産業化、太陽電池産業の未来について幅広く議論されている。29回目となる今回は中国・西安の曲江国際会議中心にて開催され、太陽電池の高効率化や作成の低コスト化に関する研究を中心に、約1,000件の発表が行われた。私は、‘Silicon feedstock & wafers’というシリコン太陽電池の原材料とウエハに関するセッションにて発表を行い、他の関連研究発表を聴講した。
次回は2020年11月8日-13日に、韓国の済州島で開催される。
図2 発表の様子
本会議では、“Quantitative evaluation of electrical characteristics of inclined grain boundaries in multicrystalline silicon by photoluminescence imaging and finite element simulation”と題して口頭発表を行った。多結晶シリコン太陽電池の最重要課題は結晶欠陥や不純物の影響を減らし、変換効率を向上させることである。欠陥の悪影響を少なくする手法の開発のために、まずは欠陥の電気的特性の正確な評価が重要である。我々は結晶欠陥の中でも粒界に着目し、その電気的特性の定量評価を行った。先行研究では、簡単のために粒界がウエハ表面に対して垂直であると仮定し、粒界の電気的特性が評価されたが、一般的な多結晶シリコン中の粒界はウエハ表面に対してさまざまな傾斜角度を持つ。そこで本研究では、PLイメージングを用いて、傾斜角を持つ粒界の電気的特性を正確に定量評価することを目的とした。
結果から粒界の傾斜角度が大きくなるほど、傾斜角度を考慮する必要性が高くなることが示された。本研究により従来手法と比較して、より正確に粒界の電気的特性を定量することが可能となり、粒界の電気的特性の微視的な解明につながると考えている。
初めての海外での国際会議での発表であった。中国での国際会議ということで、発表の前に中国語と英語で簡単な挨拶を行い、私の研究により注目してもらえるよう工夫した。これにより、発表後のコーヒーブレイク時に、多くの海外の大学の先生方に話しかけてもらい、研究内容に関しての意見やアドバイスをいただいた。聴講の場においては、機械学習を用いた太陽電池の作成プロセスの最適化に関する発表を聞き、今回の研究の次のステップにフィードバックできる知識を獲得できた。帰国後この聴講内容を所属する研究室で報告する予定である。
本学会への参加は、私の研究をより進展させるとともに、成長させる貴重な経験であった。一般財団法人丸文財団からのご支援に、この場を借りて深く感謝申し上げます。