セビリアの街並み
International Conference on Diamond and Carbon Materials (DCM) は、毎年欧州で開催されている炭素材料に関する最大規模の国際会議であり、ダイヤモンドおよびその他の炭素系材料を対象として、その作製手法や基礎物性、応用まで幅広く議論されている。
30回目となる今回はスペイン南部のセビリアで行われ、ダイヤモンドカラーセンターやダイヤモンドライクカーボンに関する研究を中心に、約300件の炭素系材料に関する発表が行われた。
次回 31st DCMは、2020年9月13-17日の日程で、スペイン東部のマヨルカ島で開催される予定である。
ポスター発表
本会議では、“Ar-ion-irradiated graphite with platinum nanoparticles studied by Raman spectroscopy”と題してポスター発表を行った。
固体高分子形燃料電池のカソードに用いられる触媒では、高い酸素還元反応活性を有するPtナノ微粒子が求められている。我々はこれまでに、触媒の炭素担体を模擬したグラッシーカーボン基板上のPtナノ微粒子において、基板へのArイオン照射による格子欠陥導入が触媒の活性を向上させることを見出している。この高活性化には、炭素基板表面へのArイオン照射によって形成される特異なPt/C界面の寄与が示唆されることから、この界面を詳細に調べることで活性向上メカニズムの解明が期待できる。そこで、Arイオン照射およびPtナノ微粒子堆積が炭素担体に及ぼす影響を調査するため、Arイオン照射したグラファイト表面にPtナノ微粒子を堆積してラマン分光測定を行った。
発表では、Arイオン照射グラファイト表面とPtナノ微粒子との電子的相互作用やPt/C界面におけるグラファイトの欠陥数について説明し、議論を行った。
博士後期課程進学後、初めての国際会議での発表であった。上述の研究のほかにも、“Coherent control of optical phonons in diamond with femtosecond infrared pulses”と題した発表も行っており、同一会議で2件の発表を行うのは初めてであったが、それぞれの研究内容について多くの研究者と議論ができ、良い経験になったと思う。また、国外の研究者から、関連する内容について意見を求められる場面があった。これまでの発表では、アドバイスをいただくことはあっても求められることはなかったため、貴重な体験であった。本会議への参加を通じて感じたこと、経験したことを今後の研究活動にも活かしていきたいと考えている。
最後に、本国際会議への参加・発表および国際交流活動のために支援していただいた一般財団法人丸文財団に感謝する。