Young Researchers BNCT Meeting (YBNCT) は2年に1度開催されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に関する国際学会である。10回目となる今回は9月26日から4日間フィンランド、ヘルシンキで開催された。BNCTは中性子線を用いたがんの放射線治療法であり、人体への影響が従来の放射線治療に比べて小さく、がん細胞のみを選択的に死滅させられるため次世代のがん治療法として注目を集めている。しかし、BNCTの実現には医学的な問題点だけでなく、工学的な課題も山積しているため、本学会では医学だけでなく工学に精通する研究者が多く参加し、オーラル、ポスター発表、合わせて約90件の発表が行われた。各セッションの間にはコーヒーブレイクやランチタイムが設けられており、セッション終了後も熱い議論が続けられていた。BNCTという一治療法の学会であるため参加人数は多くないが、参加者全員がBNCTの実現に向けて深く議論を繰り広げられる学会となっていた。
加えて、Neutron Therapeutics の BNCT装置見学会も実施され、我々が研究している治療法の実現が近づいていることを実感できた。
発表風景
私は“Development of Gamma-ray Dosimeter Using Radio-Photoluminescence Glass Dosimeter and Gamma-ray Filter in A Neutron/Gamma-ray Mixed Field for BNCT”という題目で、BNCTの実現に向けた個人線量計について発表を行った。BNCTは中性子を用いるため、それに付随してガンマ線も発生してしまう。そのため、人体への影響を正確に測定するためには中性子線とガンマ線を分離して測定する技術が要求される。我々は一般的に個人線量計として用いられる蛍光ガラス線量計(RPLGD)の周囲をガンマ線遮蔽材で覆いRPLGDの応答をコントロールすることで分離測定が可能であると考え研究を進めている。
今回の発表では、RPLGDの周囲を厚さに分布を持たせた遮蔽材(鉄)で覆うことでRPLGDの応答をコントロールしガンマ線のみの場で線量測定実験を行った結果について発表した。今回の成果は、RPLGDの応答を任意の応答に変更する設計手法を考案したことである。このことは今後に分離測定技術の開発において大きな一歩となると考えている。
コーヒーブレイクの様子
私は今回の発表が初めての国際会議オーラル発表であったため、研究内容やその要点をうまく伝えることができるのか、また活発に議論を交わすことができるのかといった不安があった。そのため、発表練習を繰り返し、質疑応答対策の追加資料を多数用意して臨んだ。練習の甲斐もあり、発表は緊張せずに研究内容を正確に伝えることができ、議長の先生からお褒めをいただいた。一方で質疑応答に関しては、私の考えの半分も伝えられなかったと感じている。今回の学会を通して改めて語学の重要性を実感した。
発表後はコーヒーブレイクやランチ、バンケットなどを通してヘルシンキ大学の方々や台湾の方との交流を深めることができた。また、英語の勉強法のアドバイスもいただいた。また、ヘルシンキ市内の観光を通して現地の方々との交流を行い、フィンランドの方々の温かさを感じることができた。
最後に、本学会への参加・発表および国際交流活動は、一般財団法人丸文財団からのご支援のおかげであり、この場を借りて心より御礼申し上げます。
ヘルシンキの街並み (Helsingin raitioliikenne)
ヘルシンキの街並み
ヘルシンキの街並み (Helsingin tuomiokirkko)
ヘルシンキの街並み (Uspenskin katedraali)