Materials Research Society (MRS) には、世界90ヶ国以上から14,500人以上の研究者が在籍している。彼らは産官学問わず、研究対象は化学、生物学、物理学、工学と多岐にわたり、まさに世界最大規模の材料学会と言える。上記の通り、材料分野が集まることで、本学会は立体的な活動の場を構築し、研究者たちが協力し、統合し、提唱することができる枠組みを提供している。
例年、春にPhoenix、秋にBostonで国際会議が催され、今年度は2019年4月22日から26日の5日間、Phoenix Convention Centerにて執り行われた。参加者は4,000人以上に上り、会議のテーマは、無機・有機・バイオ材料の基礎・応用研究をはじめとして約60分野から構成され、数多の議論や交流が行われた。私自身は無機半導体技術応用の分野にて発表を行い、本セッションではIV族・III-V族半導体の結晶評価とデバイス応用関する発表や質疑応答が活発に行われていたことが印象深い。
次回は例年通りBostonにおいて、今年秋に2019年12月1日から6日の6日間に開催予定である。
学会会場の外観1
学会会場の外観2
次世代デバイスの実現を目指し、絶縁基板上にGe薄膜を形成する技術は、各国の研究者がしのぎを削って研究している。
発表時の様子
我々の研究グループは、非晶質前駆体の熱処理により結晶薄膜を合成する「固相成長法」において、前駆体となる非晶質Geの密度制御によりGe薄膜の大粒径化を実現すると共に、低温合成膜の最高移動度を更新し続けてきた。
今回発表者は、Ge/下地界面に着眼すると共に、GeO2下地層を挿入することにより界面核発生頻度を低減し、従来の約2倍の結晶粒径を実現した。これにより、更なる正孔移動度の向上・正孔密度の低減を同時に達成した。本知見をプラスチック基板に応用した結果、プラスチック上に作製した薄膜中で最高の移動度(500 cm2/Vs)が得られた。本研究で得られたGe薄膜は世界最高レベルの品質を示し、太陽電池応用・三次元LSI応用など、数多の優れたフレキシブルデバイスを開拓する革新的成果である。
上記の研究内容について、“High-hole mobility (500 cm2/Vs) polycrystalline Ge thin film on a GeO2 coated flexible plastic substrate”という題目で、15分間の口頭発表を行った。
第一に、日本を超えた先での発表でも自身のプレゼンが伝わった事実に、人種を超えた交流が、英語という統一言語によって実現する偉大さを再確認した。くわえて、講演後に、聴講者の一人から研究アイデアの提案や共同研究の打診が行われ、我々の研究内容が他国の研究者へ印象を与えたことを非常に誇りに感じた。また、他参加者の講演内容も大変興味深く、口頭発表やポスター発表に積極的に参加することで、自身の研究に対する理解の深化・多角化に結実した。
会議参加以外の点についても、Phoenixの日本では決して味わえない砂漠気候の経験、さらにUSAの食・生活文化へ触れた事は、自身の価値観に影響を与える貴重なものであった。
これらのかけがえのない体験は、丸文財団の存在があってこそです。この場を借りて、本会議への参加に際し多大なるご援助を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。
企業ブースの様子
Phoenixの夕焼け